アベノミクスに対する期待感から株価は上がり続け、ここ数年ではありえなかった日経平均株価1万2000円も珍しいことではなくなってきました。日本人の株への関心も目に見えて高まっています。今回登場するウォーレン・バフェットは、1万ドルを元手に株式投資だけで620億ドルの資産を生み出した世界一の投資家。彼の投資手法に学びたいと考える人は多いと思いますが、バフェットの流儀は日々の株価の値動きに一喜一憂する短期投資家には耳の痛いものかもしれません……。

アメリカ経済に多大な影響力を持つバフェットの
誠実でユーモアのある日々の言葉

日々の株価に右往左往しない!<br />世界一の投資家が莫大な資産を生み出した流儀<br />ジャネット・ロウ著/平野誠一訳『[新版]バフェットの投資原則 世界No.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか』(写真左)
 2008年8月刊行。本書のルーツは、1999年7月に刊行された『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』(写真右)にあります。読者の方々からの復刊のご要望にお応えして、2005年6月に『バフェットの投資原則』(写真中央)と改題して刊行されました。その後、原書が改訂・増補されたのに伴って、新版の出版に至っています。
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 株式ブローカーの父親を持ち、11歳にして初めて株式に投資したウォーレン・エドワード・バフェット。世界的大富豪として知られ、歴史上もっとも成功した投資家とされています。

 近年では、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが設立した財団に300億ドル相当(2006年当時の為替レートで3兆4500億円!)の株式を寄付するなど、慈善事業家という新しい顔も覗かせています。また、「財政の崖」危機に瀕した米議会やオバマ大統領に対して富裕層への増税を訴えるなど、その行動力や影響力は80歳を過ぎてなお衰える気配はありません。

 つい先日も、リーマン・ブラザーズが経営破綻した直後の2008年9月、経営危機に直面したゴールドマン・サックスのワラント(株式引受権)を巨額購入していたことが判明しましたが、日本の株式市場が活況を取り戻してきた昨今、彼の著作に関心が高まるのはごく自然な流れなのかもしれません。

『[新版]バフェットの投資原則』は、テクニカルな投資技法やライバルを出し抜く戦術を公開したものではなく、この種の本にありがちな自慢話に終始しているわけでもありません。日々の発言を丹念に拾い集めて編集した「バフェット語録」といったほうが正確です。およそ鉄火場の住人とは思えない誠実でユーモアのある語り口が象徴するように、バフェットはいかなる投資においても誰も傷つけていないし、また誰からも憎まれていません。たぶん。