第190回NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(2012年8月20日放送)で取り上げられ、カリスマ駅弁販売営業所長として知られる三浦由紀江氏。なんと、10代~60代まで、110人のパート・アルバイトを束ね、所長就任4年で売上を1億1000万円アップさせた。この間、就任4年目にはあの東日本大震災があった。東北新幹線という大動脈を命綱にする大宮駅の駅弁販売がメインだけにこの痛手はあまりにも大きい。でも、三浦氏は逆境にめげずに、1本370円のミネラルウォーター「はやぶさウォーター」を“復興の旗印”と自ら考案。震災後の4割減収のピンチを救った。
このたび、『時給800円から年商10億円のカリスマ所長になった28の言葉』を刊行した三浦氏に、売上が大幅アップした秘密を語ってもらった。

NHK『プロフェッショナル』で「前代未聞の人事」という反響

 私が上野駅や大宮駅などで駅弁を売っていると、よく、「三浦さん!『プロフェッショナル』見たよ!」と声をかけていただきます。

 2012年8月に放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀 楽しむ心が、道を拓く 駅弁販売・営業所長・三浦由紀江』では、JR東日本グループのNRE(日本レストランエンタプライズ)大宮営業所長として働く私の奮闘ぶりが描かれ、たくさんの方から感想をいただきました。

「非常にパワフル。長い間、主婦をしてきた視点を活かして駅弁販売をしている。やっぱり仕事は楽しまなくちゃ」
「所長就任1年目に5000万円も売上アップさせた手腕は、持ち前のアイデアやチャレンジ精神のたまもの!」
 などのうれしい反響のほかに、
「専業主婦から44歳でパートになった。これはよくあること。働きぶりを認められて正社員になった。これもある程度ある話。でも、正社員になって1年後に赤字営業所の所長に抜擢されて管理職になった。これは前代未聞の人事!決めた会社上層部も、抜擢された三浦さんもすごい!」
 と、いうものがありました。
 まさに、そのとおりです。自分でも前代未聞だと思います。
 私は44歳まで専業主婦でした。
 それから駅弁販売のパートを始め、52歳で正社員になりました。

 私は、2007年3月26日を忘れることができません。
 私が50年以上生きてきたなかで、間違いなく10本指に入るくらいとんでもない出来事が起きたのです。

パートが正社員になって1年後に赤字営業所の所長に抜擢

 2007年3月26日、「社長面接があるから」と本社を訪ねると、社長室の隣にある応接室に通されました。
 社長、常務、勤労部長の机が並び、その前に私用の椅子が1つ用意されていましたが、社長の姿はありません。
 常務、勤労部長と一緒にしばらく待っていると、社長が部屋に入ってきました。

「形式張った面接は必要ない。三浦を大宮営業所へ行かせるって、もう決めたから」

 常務、勤労部長が慌てて、
「社長、そうは言っても三浦の考えを聞かないと」
「まずは管理職として適材かどうか話を聞きましょう」
 と口をはさみましたが、社長の意思は揺るがない様子でした。

「三浦しかいないんだ。大宮営業所の所長として大宮を変えてくれ。三浦の得意なところで勝負してくれることを期待している」

 呆然としている私に常務と部長は言いました。
「三浦さんならできるよ。パート時代から活躍は本社で有名だったんだ。パートから社員に引き上げるときも社長はすごく悩んだ。でも、結局社長は50歳の三浦さんを社員に引き上げ、なおかつ能力を認めて管理職にした。社長は自分の目で人をしっかりと判断する人だよ。社長が三浦さんを見込んだんだから大丈夫!」

 ありがたい言葉をかけてもらいましたが、やっぱり自信がありません。
「これからどうなってしまうのだろう」との不安から、帰りの電車の中で思わず涙が出てきたのです。