算数と数学の違いは押さえた。そのうえでいざ数学を勉強するときに、注意点はあるのだろうか?『大人のための中学数学勉強法』で「仕事と生活に役立つ7つのテクニック」を紹介した永野裕之氏によれば、我々が中学数学を復習する際には、大人ならではの「イメージ」が強力な武器になるという。

 私は『大人のための数学勉強法』で、「正しい方法で取り組めば、数学は誰にでもできるようになる」という信念のもと、数学の正しい勉強法と「どんな問題も解ける10のアプローチ」について書きました。おかげ様でたいへんよい反響を戴いたのですが、題材を高校1年生程度の内容に取っていたため、「難しすぎる」というご意見も頂戴しました。

 そこで『大人のための中学数学勉強法』では数学の一番初めに立ち戻り、中学数学の全体を大人ならではの視点で捉え直しながら、数学の世界にどのように入って行けばよいのかを、そして中学数学から得られる数学的・論理的思考法のテクニックを伝えようと思いました。

大人にはわかる数学を学ぶ意味

 数学に限ったことではありませんが、新しいことを学ぶときに大切なのは「イメージ」です。

 そもそもある事柄が「わかる」とは、それを既知のものと結びつけることができて、自分の言葉で言い換えられることです。単に辻褄があっていることを確認できただけでは、わかったことにはなりません。学んだことを本当にわかったかどうかが知りたければ、
 「おばあちゃんにも理解できるように説明してあげられるか」
と自問してみてください。きっと、わかったつもりになっていただけのことが浮かび上がってくると思います。

 相手の理解のレベルに合わせて言葉を選び、噛み砕いて説明できるためには、対象を一面的に理解するだけでは不十分です。数学で言えば、無味乾燥な数式の羅列や幾何学模様は、別の視点からみたイメージを添えてあげることではじめて生きた意味を持つようになります。そして、この「生きた意味」によって実現する立体的な理解こそが自分の言葉で言い換える際には必要であり、これによって公式や解法の奥に潜む本当の意味もつかむことができるのです。

 数学を、単なる暗記科目として何の役にも立たないものに成り下げてしまうか、生きるためのかけがえのない知恵に化けさせるかの分かれ道もまさにここにあります。

 ではどうすれば豊かなイメージとともに数学を学ぶことができるのでしょうか?それを可能にするのは、豊富な語彙と人生経験です。この点において大人は圧倒的に有利です。

 当然、大人に比べると中学生は語彙も人生経験も不足しています。そこで本来は教師が具体的なイメージを付け加えてあげることで、数学に息吹を与えてあげることが必要なのですが、そういう先生は必ずしも多くありません。結果として、多くの中学生にとって数学がどんどん実生活からかけ離れたものになっていき、学べば学ぶほどチンプンカンプンな、拷問のような科目になってしまっているのは本当に残念なことです。