特ダネは記者ではなく、企業の広報が作るもの──。大手総合商社の広報担当者はごく当たり前のことのように言い放った。

 中でも載せたいのが日本最大の経済ニュース媒体である日本経済新聞。

「書いてもらいたい案件をこちらからリーク(情報を漏らすこと)すれば、特ダネとして紙面で大きく扱ってもらえるし、うちだけじゃなく、多くの上場企業でやっている。海外案件ばかりで一般紙ではベタ記事になることの多い商社業界は、特にその傾向が強いけどね」

 担当者はそう言って、リークから紙面化までの具体的なスケジュールを説明し始めた。それを図解したのが下の図だ。こうしたリークの仕組みは完全にマニュアル化されているという。

スクープの裏側 <br />読者が絶対に知らない<br />リーク依存症という重病

 これまで日経のためのプレスリリースを幾度となく企画してきたという担当者は、こうした広報スタイルを「日経ファースト」と呼んでいる。

 特ダネといえば、記者たちが幹部宅への「夜討ち朝駆け」取材で積み重ねた情報を基に書かれると想像していた読者からすると、にわかには信じられないだろうが、一部であるとはいえ、会議室で生まれる特ダネがあるのだ。

 ただ、日経の記者が取材を怠っているかといえば正反対で、体育会系社風の下、記者たちは業界で最もハードワークが求められる。

 日銀クラブなど多忙な部署に配属されれば、「超絶激務で知られる外資系金融並みの睡眠時間が連日続く」(日経の経済部記者)。ライバルである毎日新聞の30代男性記者が「日経さんはうちの数倍は働いている」と語るほどで、そこから生まれる特ダネも数多くある。