世界経済のパワーバランスを大きく変えるといわれる「シェール革命」。安価なシェールガス、シェールオイルの登場で、世界の経済や政治に大きな地殻変動が起こることになる。これまで世界経済を牽引してきたBRICs諸国は、シェール革命によってどのような影響を受けるのか。

エネルギー価格の下落はすでに始まっている

 いまアメリカでは「シェール革命」という、かつての産業革命に匹敵する大変革が進行中です。これが進むと、アメリカは再び世界の工場として復活し、膨大な雇用を生むと期待されています。

 しかし、これから先は、アメリカ経済が活況を呈しても、それが世界経済に及ぼす効果は限られたものになると思われます。なぜならば、アメリカのシェール革命が世界のエネルギーの需給関係に大きな変化をもたらし、資源大国といわれている国々を没落させることになるからです。

 シェール革命によって、アメリカの天然ガス価格はこのまま低位で安定を続けるでしょう。加えて輸出規制が撤廃され、アメリカ産のガスが海外へ自由に輸出できるようになると、世界的に天然ガスの需要が増加すると同時に、原油の需要が減少するという現象が広がっていくはずです。

 そして、天然ガスの需要は増加するものの、長期的に国際的な価格は下落していきます。

 というのも、アメリカの天然ガス指標価格であるヘンリーハブは現在きわめて低位にあり、イギリスの指標価格であるNBP価格やロシアの天然ガスの輸出価格、日本の液化天然ガスの輸入価格などがそれに引きずられて大きく下落していくことになるからです。