アベノミクス効果はどこまで続くのか?株高・円安は5月22日まで順調に進んだ後、乱高下が続いている。『日本経済の憂鬱 デフレ不況の政治経済学』(6/27刊行)の著者・佐和隆光教授によるアベノミクス分析の後編をお届けする。アベノミクスは小泉元首相が手がけた自由至上主義的な経済政策と一線を画するどころか、まったく対照的な国家資本主義と見てとれる。

中曽根・小泉と安倍の大いなる違い

 自民党政権をになった過去の宰相のうち、中曽根康弘と小泉純一郎を私は高く評価する。ふたりとも、筋金入りの保守主義者だったからだ。

 保守主義者とは、次の2つの条件を満たす人のことをいう。第1に、伝統を保守するという意味で国家主義者であること。第2に、経済政策の面では市場主義、すなわち自由で競争的な市場経済の機能に全幅の信頼を置き、官から民へ、規制改革、小さな政府をモットーとして掲げる。中曽根と小泉両元首相が、これら2つの主義を貫き通したことはあらためての説明を要しまい。

 自他ともに許す自民党極右の安倍が、国家主義者であることに異論をはさむ余地はない。民主党政権の経済無策の虚につけこみ、アベノミクスの見取り図を描いた、機を見るに敏な安倍の黒子参謀には恐れ入る。

 「経済を、取り戻そう」とのスローガンを掲げ、「デフレ・円高からの脱却を最優先に、名目3%以上の経済成長を達成します」と選挙公約で謳(うた)いあげた。「脱原発」を一大争点にしようとする他党の裏をかいてみせ、エネルギーに関しては「遅くとも10年以内には持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立します」という曖昧な表現にとどめた。

 参謀の企てたポピュリズム的戦略・戦術は、みごとに功を奏した。私が想像するに、脱原発を声高に唱えていた「衣食足らざる」無党派有権者のかなり多くが、これはこれ、それはそれ、「3%以上の経済成長」にいたく魅了され、自民党候補に票を投じ自民圧勝への道を切り拓いたのだ。