6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」にも取り上げられるなど、近年、日本でも投資型クラウドファンディングという言葉が徐々に定着しつつあり、インターネット上で個人からマイクロ(小口)投資で資金を集め、企業や地域を再生・応援する仕組みへの関心がますます高まっています。しかし、経済的リターンはどの程度あるのか、資金を提供するメリットは金銭的なもの以外にもあるのか、実感した人は少ないのが現状ではないでしょうか。
今回は、約200に及ぶファンドを通じて、総額34億円もの資金調達をしたミュージックセキュリティーズ株式会社の小松真実社長に、ファンドが出資者と事業者の双方に何をもたらすのか、を伺いました。(構成:齋藤麻紀子)

「大事なのは、『一緒にゴールを目指す』姿勢」
ファンドで被災地の事業者を応援する

――ファンドを使って、アーティストの制作支援や地域・事業再建を続けてこられました。なかでも御社の名を全国区にしたのが、被災地の事業再建資金を募る「セキュリテ被災地応援ファンド」です。民間企業としては記録的な額となる10億円を調達しましたが、まずは率直な感想を聞かせてください。

「半分寄付、半分投資」の<br />「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げたワケ<br />――「10年後を約束し合う」ファンドで10億円を調達小松真美(こまつ・まさみ)
ミュージックセキュリティーズ株式会社 代表取締役
2000年12月ミュージックセキュリティーズを創業し、『もっと自由な音楽を。』をモットーに、こだわりを持ったインディペンデントなアーティストの活動の支援をする仕組みとして音楽ファンド事業と音楽事業を開始する。2006年より音楽以外のファンドの組成を開始し、現在は純米酒の酒蔵、農林水産業、アパレル、Jリーグチーム、再生可能エネルギー、地域伝統産業等190本超のファンドを組成する。2011年「セキュリテ被災地応援ファンド」、2013年「セキュリテエナジー」、「ソダッテ阪神沿線」プロジェクトを開始した。2013年、さらに多くの人、そして事業者に活用してもらうために、大阪に支社を設立。

小松 ありがとうございます。出資者が自ら応援したい事業者を選び、直接投資できるという透明性が評価されたのだと思います。震災直後、多くの人が寄付に対して「誰に渡るのか」「どう使われるのか」と思っていらっしゃると聞いていましたから、余計に注目していただいたのかもしれません。ただ、まだ被災地の事業者の方々には、ニーズがあると感じていますので、引き続き募集を行っていきたいと思います。

――改めて「セキュリテ被災地応援ファンド」について教えてください。「寄付」ではないのですか?

小松半分寄付、半分投資です。1口10,500円のうち、5,000円は事業者に寄付され、5,000円は事業者に投資されます。500円は当社の手数料です。

――「投資」ということは、その5,000円にはリターンがあるのでしょうか。

小松 ファンドは事業者ごとに設定されており、事業者の売上に応じてリターンがあります。ただし償還されるのは、事業者によって異なりますが、長いものだと10年後。託したお金が、事業者の再建のために活躍し、10年後に手元に返ってくるイメージです。

――元本割れのリスクは。

小松 あります。ですから、10年間は事業者を応援したり、ときには一緒に戦ったりする姿勢が生まれます。「お金を渡して終わり」ではなく、事業者と「10年後を約束し合う」感覚に近いです

――投資したうえで、さらに応援したり、戦ったり。

小松 もちろん実際に戦う必要はないですが、出資者の方には、そんな姿勢でいてくださる方が多いですね。お魚が好きな方は水産加工会社、福島県を応援したければ福島の事業者など、応援したい事業者を選んで出資します。だから、なおさら「一緒にゴールを目指す」姿勢が生まれるのかもしれません。

――同じお金ですが、寄付とは意味が違うのですね。