2008年秋のリーマンショック以来、緩和傾向が続いてきた首都圏の中学受験市場にも、復活の兆しが見えてきた。とはいえ、受験者動向には学校間格差が生じてきている。難関・上位校が受験者数を増やしているのは、大学合格実績に対するシビアな親の意識が働いているからだ。中高の6年間で、本当に子どもの能力を伸ばしてくれる学校はどこなのか。入りやすくて「お得」な学校を見分けるためのヒントを探してみよう。

森上展安(もりがみ・のぶやす)
森上教育研究所代表。1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾を経営後、88年から現職。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』『中学受験 入りやすくてお得な学校』(ダイヤモンド社)。

 「3年前の体験があてにならないほど、中学入試の受験パターンは目まぐるしく変化しています」と語るのは、中学受験の第一人者である森上展安・森上教育研究所代表。親世代の体験はもちろん、お兄さんやお姉さんの受験経験も通用しなくなるぐらい、学校側の対応が年々目まぐるしく変化しているというのだ。

 東京や神奈川の受験生は、1月中に埼玉や千葉の学校でお試し受験をして、まずは合格体験を得たうえで、2月1日の第1志望校を受験、念のために2日以降にも併願校を数校用意しておく、というのがこれまでのパターンだった。

 ところが、最近は受験生のニーズを反映してか、受験スタイルにも多様化が見られる。その背景にあるのが、午後入試の普及であり、同じ学校を複数回受けたり、早く合格したいからと本命受験校の日取りを前倒しするような傾向である。 

入試傾向と大学合格実績を調べて
悔いのない併願パターンを

 その結果、顕著になってきているのが、東京や神奈川での2月1日への有名校の集中傾向である。2日や3日に最初の入試を行っていた学校が入試初日である1日に移ってくるようになったため、全体的に1日の受験倍率が緩和傾向にある。予想倍率が2倍を割るような学校が目に付くようになってきた。以前よりも入りやすくなるこうした「穴場校」は志願校として検討する価値がある。

 午後入試の普及は、併願校の選択肢を広げた。あえて午前入試を避けて午後入試を受けることで、倍率や偏差値レベルが低めで「入りやすい」学校が出てきている。早く合格を手にしたい受験生の中には、午前と午後の入試をかけもちするような傾向もある。