先日報道された「世界幸福度報告書2013」でも、2年連続幸福度ランキング1位となったデンマーク。デンマーク人は、なぜこれほど幸福度が高いのだろうか。一方で、人口わずか550万人の国にはグローバル企業も多く、世界競争力ランキングでも常に上位に入る。デンマーク人はどのように競争力を維持して生産性を保ちながら、幸せな働き方を実現しているのか。日本人が学べるデンマーク人のユニークな働き方を、留学中の大本綾さんが紹介。大好評の「留学ルポ」連載、第7回。

問題を指摘されると喜ぶデンマーク人の友人

 先日、コペンハーゲンで日本から視察にいらした起業家の方々とお話する機会がありました。そのとき盛り上がった話題は、なぜ国民一人当たりのGDPが日本よりもデンマークの方が高いのか(デンマークは世界7位、日本は13位)、デンマーク人の生産性の高さの理由はどこにあるのか、という内容でした。

 デンマークは人口550万人で兵庫県の人口に相当します。基本的にデンマークの多くの企業は社員数も100~200人程度と小規模ですが、世界競争力ランキングでは常に上位に入ります。世界的な企業でいうと、レゴや、飲料会社のカールスバーグ、風力発電メーカーのヴェスタス、海運企業のマースクなどが挙げられます。

 デンマーク人はどのように競争力を維持して生産性を保ちながら、さらに幸福度の高さを保っているのでしょうか。社会システムはその国の文化に根ざしたものなので、日本がそのまま取り入れるのには困難が伴いますが、日本人が学べるデンマーク人のユニークの働き方をいくつか紹介したいと思います。

 生産性の高い働き方とは何か語る上で、デンマーク人がどのように問題解決のアプローチを行うのかを知ることは重要です。これについて先日興味深い経験をしました。留学先のカオスパイロットでの出来事です。

 カオスパイロットは、インターナショナルスクールのため公用語は英語です。しかし、大半の生徒がデンマーク出身で海外滞在経験はあっても英語圏の帰国子女ではないので、ついつい母国語で話し出す人もいます。

 グループワークの課題が多い中で、互いの理解にずれが生じることを防ぐため、私のチームでは常に共通言語を使用する重要性を話していました。しかし改善されない状況だったので、ある日授業が終わった後に35人のチームメイトに問題をはっきりと指摘しました。

「最近、同じ言語で話す人たちだけが集まってその中で分かる話をしている状況をよく見る。私はこれがチームの間で壁をつくっていると思う。共通言語で話そうと前から個別に注意をしてきたけど、正直に言って同じことを何度も言うのにも、疲れてきた。

 北欧の言語を理解できないから、英語で話してとお願いしているんじゃない。私たちが、共通言語を話すことで得られる異文化理解の機会を失いつつあるのではないかということ。多様性という価値をチームとしてどう捉えるのか、一度考えてみてほしい」と言いました(実際は3分程度話しましたが、ここではポイントのみ紹介)。

 こんな話をするとみんな嫌な顔をして聞くだろうなと思っていたのですが、デンマーク人のチームメイトたちは、むしろ嬉しそうな顔をして私の話を聞いています。さらに驚いたのは話し終わると、拍手大喝采が起きたのです。

 そして、あとで何人もの人が私のところにやってきて「はっきり言ってくれてありがとう!素晴らしいスピーチだったよ」と感動して嬉しそうに言いながらハグを求めてきます。

 ネガティブなフィードバックをしたつもりなのに、あまりにも明るくポジティブな反応が返ってきたので拍子抜けしてしまいました。一瞬、自分の言ったことを本気で捉えてくれているのか疑問に思いましたが、その後チームの状況が劇的に変化したので、効果は明らかでした。

 それにしてもなぜこのような意識の違いがあったのか、不思議に思ってカオスパイロットで教えるデンマーク人のある講師に聞いてみました。