仕事と家族に重い責任を負うビジネスパーソンにとって健康管理は基本中の基本。体調に気を配ったり、年1回健康診断を受けて生活習慣病の予防や疾患の早期発見に努めているだろう。しかしそれだけでは万全の健康管理とはいえない──。

一般健診では「がん」の
早期発見ができない

 会社員であれば年1回以上、健康診断を受けているはずだ。労働安全衛生法によって「一般健康診断」(一般健診)や「特定健康診査」(特定健診)を受診することが義務付けられているからだ。だからといって安心してはいけない。一般健診や特定健診は多くの人がかかる高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発見が主目的であり、40代、50代の働く世代に多いがん検診の項目は含まれていない。

 そこで注目されているのが一般健診より検査項目を増やした「人間ドック」。一般健診の項目に加えて腹部超音波検査や胃X線検査、内視鏡検査、眼底検査などを行う上に、医師による診察と診断結果説明、保健師による保健指導などを受けることができる。

 そうであれば人間ドックのほうがより健康管理に役立ちそうだが、日本人間ドック学会の調査「2012年 人間ドックの現況」によると09年以降、1日ドックの受診者数は300万人前後で横ばい、2日ドックは20万人台から17万人台へ減少している(図)。

 健康を気にしているのに受診しない言い訳としては、「まだ大丈夫」「費用がかかる」「面倒」「病気が発見されたら怖い」というところだろう。

「まだ大丈夫」と思いたい気持ちはわかるが、医療ジャーナリストの松井宏夫氏は「40代の受診」を勧める。「40代は責任ある仕事を任される年代だし、自覚がなくても体力は確実に落ちている」からだ。

 人間ドック受診者を年齢別に見ると40歳未満が約44万人に対し、40代では100万人、50代では99万人と2倍以上に増える。

●話を聞いたのは●
医療ジャーナリスト
松井宏夫 氏

サンケイ出版、「週刊サンケイ」記者を経てフリージャーナリストに。医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。

 20代、30代から受けてもよいが、「無駄な検査は避けるべき。費用がかかるだけでなく、体にも負担をかけてしまいます」と松井氏。

 例えば喫煙習慣のある20代女性が肺がんが心配だからと毎年CT(コンピュータ断層撮影)検査を受けていたケースがあった。被ばくリスクのあるCT検査は1日20本のたばこを30年間吸い続けてきた50代が受けるべきで、20代女性であれば肺レントゲン撮影で十分で「肺がん検査自体が不要」。

 初めて受診するのであれば病院で検査項目の相談をして、費用を抑えながら過不足のない検査を受けるようにしたい。