ネスレ日本100年の歴史において、史上初の生え抜き日本人CEOに就任した高岡浩三氏。「キットカット」受験生応援キャンペーンや「ネスカフェアンバサダー」など、数々の革新的な取り組みを実行してきた。『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、著書では語り尽くせなかったマーケティングの真髄が明かされる。

これまでの「ネスカフェ」ビジネスからの脱却

 ネスレ日本は、1960年の「ネスカフェ」発売以降、マーケットリーダーとして常に新しい市場を創造し、日本のコーヒー文化を醸成してきた。

 現在、缶コーヒーからカフェのコーヒーまで、1年間で飲まれるコーヒーの総量は480億杯だとされる。実に、そのうちの4杯に1杯に当たる120億杯は「ネスカフェ」なのだ。

 一方で、これからの数十年を考えたとき、大きなイノベーションが必要だとも考えていた。第1回で、「キットカット」は好きだが、「ネスカフェ」はそれほど好きではなかったという話をしたが、いまや「ネスカフェ」にかつてのようなステータスを感じられない人もいるのではないだろうか。

 私は「ネスカフェ」をカッコいいブランドにしたいと思っていたのである。