「OKライン」メンタルトレーニングを提唱し、今季プロゴルファーの横峯さくら選手をサポートしたことで注目を浴びたメンタルトレーナーの森川陽太郎さん。特別記事の後編である今回(前編のインタビューはこちら)は、彼があるコンプレックスを抱えながらもプロサッカー選手を目指し渡欧し、そこで肌で感じたメンタルを捉える感覚の違いや、見えてきた100%実力を発揮する思考法を紹介します。

海外でプロ契約の夢を果たすも怪我で引退
消えなかったコンプレックス

 私は、本格的にサッカーを始めたのが中学生からと周りの子たちと比べると遅いスタートでした。それでも「やるからには絶対にプロサッカー選手になるぞ!」と意気込み、中学校の部活に入りました。それからは毎日、学校の授業が始まる前の朝の練習と授業終了後の午後練習、そして、土曜日と日曜日は試合というサッカー漬けの日々を送りました。私はこの中学生活の中で、その後18年間持ち続けることになる大きなコンプレックスを「他人と自分を比べること」でつくり上げてしまいました。

 そのコンプレックスとは、サッカー選手になりたいという夢を持っているのにもかかわらず「サッカーがうまい人と一緒にプレーすると委縮してしまう」「サッカーがうまい人とプライベートでもうまく話すことができない」という2つの致命的な弱点です。私はこのコンプレックスをどうしたらなくすことができるのか思考錯誤し、やれることはすべてやってみました。

マイナスの感情も受け入れよう――<br />「自分と向き合うこと」が実力の発揮につながる森川陽太郎(もりかわ ようたろう)
1981年東京生まれ。元サッカー選手。スペインやイタリアでプレー。その後心理学やメンタルトレーニングを学び、27歳で株式会社リコレクトを設立。「OKラインメンタルトレーニング」という独自のメソッドを展開。
様々なスポーツの日本代表選手をサポートし、2012年・2013年ミス・ユニバース・ジャパンオフィシャルトレーナーとしても活動中。大手企業の社員研修も担当し、ビジネスマンの目標達成、ストレスマネジメント、モチベーションなど様々な問題を解決している。
著書に、『「いつもの自分」トレーニング』(ダイヤモンド社)、『ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則』(かんき出版)。

 高校生の頃は高校の部活に参加した後に所属していたクラブチームの練習、そして毎日帰宅は24時を過ぎるのですが、必ず皇居を走るという生活をしていました。サッカーが下手だった自分は「努力の天才」になるしかないと思い毎日練習に明け暮れました。高校時代に所属していたクラブチームではレギュラーでもなく、Bチームでも試合に出ることができない状態でした。

 しかし、「自分の夢はあきらめないで努力すれば絶対に叶えることができる」と信じて私はサッカーに取り組み高校卒業後スペインに渡りました。厳しい差別などもありましたが、1年後にはクラブと契約しお金をもらってプレーをするということも経験することができました。

 その後、練習中に足首の軟骨がかけてしまう怪我を負い、医師には「もうサッカー選手としてプレーすることは無理」と告げられました。しかし、あきらめずに5回の手術と3年のリハビリを経てイタリアのクラブと契約することにも成功しました。結局怪我は完治せず引退を決意しましたが、今考えると憧れていたことを自分なりの形で実現したのだと思います。それでも、コンプレックスをなくすことも、自信を持つこともできませんでした。