30代から指摘された高尿酸値を20年放置
痛風発作から不眠症に陥ったFさん(55歳)のケース

健康診断で毎年「尿酸値」を指摘されるも
生ビールを愛飲し続ける

 Fさんは社会に出て30余年。健康診断の前日以外、飲まない夜をあまり思い出せない。Fさんが社会に出た昭和50年代初頭は、男は酒が強いことがステータスという時代だった。酒の席を断らないことが、出世の一歩だと思っていた。

 特に生ビールが大好きで、居酒屋では席につくなり「生ビール大」と叫んでしまう。仲間と飲まない日は、家で500mlのロング缶を2~3本。ここ数年は発泡酒を飲むようになったが、休みの日は昼間から缶ビールを開けてしまうほど、ビール党を自認していた。

 そうした生活が祟ってか、Fさんは30歳を過ぎたあたりから、毎年健康診断で尿酸値が高いと指摘されていた。基準値を上回る数値を示して、医師に「まずお酒を控えてください」と言われる度に、反省はするが、健康診断が終わった安心感でついついその夜から居酒屋に行ってしまう。

 仲間が、血圧やコレステロール、血糖値で再検査になるなか、Fさんは健康診断で言われるのは「高尿酸値」だけ。病気という意識は全くなかった。20年も言われて続けているのだから…。最近の人間ドックでも指摘されていたが、さほど気にしていなかった。

原因不明の関節痛が
ひじ・ひざを襲う

 50歳を過ぎたあたりから、Fさんの周囲では尿酸値の薬を飲む仲間が増えた。彼らは痛風の発作を武勇伝のように語る。しかし発作が過ぎると、また飲み始めてしまう。痛風の発作を経験した仲間は、ビールから焼酎に切り替えていたが自分だけビールを飲み続けた。

 Fさんはかなり前から、関節痛の自覚症状があった。特にひじとひざの痛みがひどい。不定期に起こる痛みに耐え切れず何度か整形外科に行ったが、レントゲンを撮っても何も見つからず、医師からは湿布を渡されただけだった。まれに「ストレスで筋肉が固まっているのかもしれない」と安定剤を処方してくれた医師もいたが、多くの医師が関節痛を加齢や運動不足のせいにして、痛みを解決してはくれなかった。