クロスボーダーM&Aでは、デューデリジェンスから交渉、そしてPMI(Post Merger Integration)に至るまでのプロセスの全体像を熟知した「トラステッド・ビジネス・アドバイザー(Trusted Business Advisor)」の存在が、M&Aの成否を握っている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が、注目される理由もそこにある。

フィリップ・P・ブライズ
プライスウォーターハウスクーパース
M&A統合支援
パートナー
(英国勅許会計士)

 クロスボーダーM&Aでは特に、「異文化世界との協調」という大きな壁がある。PwCで四半世紀にわたりM&A業務を担ってきたフィリップ・P・ブライズ氏は、「買収プロセスでの情報共有一つにしても、開示内容、情報の解釈の違いなどで交渉が頓挫することが珍しくない」と言う。

 買収先企業と信頼関係を構築したくても、基本的な信用と理解がない中で信頼が醸成されるはずはない。「理解と信頼を醸成する策を、事前に買収戦略に組み込んでおく必要があり、実現可能性が低いのであれば、M&Aを再考する決断もあり得ます」(ブライズ氏)。

企業同士の融合策の
創造を促す存在

 そこで重要になるのが、デューデリジェンスから交渉、PMI(Post Merger Integration)に至るまでのM&Aのすべてのプロセスに精通したアドバイザーの存在である。しかも、単に買収先企業と買収企業両社の考えを中継するだけではなく、両社の背景にある文化や思想、習慣、ビジネス上の考え方を理解した上で、最適な融合策の創造を支援する「トラステッド・ビジネス・アドバイザー」が求められる。

 その意味では、総合的な支援体制があるビッグファームは頼もしい。PwCのグローバルネットワークは、世界157ヵ国に約18万人以上のスタッフを擁する。約9万人が公認会計士で、財務・管理会計の圧倒的な知見を背景にした客観的なアドバイスは、専門ブティックにはないものだ。

 日本では、約4000人の会計士やアドバイザーが活動している。ディールズ部門には、約250人が従事し、いわゆるワンストップ・サービスを提供している。

 ブライズ氏は、「PwCのグローバルなネットワークは、世界の多様な文化と企業にアプローチするための航路です。そこには専門性を備えた水先案内人がいます。外国人として日本企業を見て、一方で欧米の企業も見続けてきた私のようなアドバイザーの視点は、M&Aにおける異文化ギャップの解消に大きく貢献できると自負しています」と話す。