「接遇力」がマニュアルやルール、マナーを理解することで身に付くものではないことは、これまでの連載で説明してきた。では、どうすれば接遇力を高めることができるのか。今回は効果的に接遇力を高めるための三つの要素、「気づく」「聴く」「届ける」について理解していく。

 接客の現場で、目の前の顧客を相手にするとき、ともすると大勢の中の一人として対応しがちで、機械的な対応となってしまうこともあるが、顧客の立場からすると、常に自分は「オンリーワン」であり、自分が大切にされているかどうかに注意を払っている。

浜田純子 モアグロウ代表浜田純子
モアグロウ 代表

 モアグロウの代表取締役であり、企業向けに接遇力を高めるトレーニングを行っている浜田純子氏は言う。

「お客さまは、すべて、『個人』であることを忘れてはいけません。商品・サービスを提供する一瞬一瞬を、一期一会と思い、一人ひとりにここに来てよかったと満足してもらえる接客をすることが大切です」

 では、顧客にそうした満足をもたらす接遇は、具体的にどのような行動から実現できるものだろうか。浜田氏の考えを中心に、「気づく」「聴く」「届ける」の3要素からそのヒントを探ってみよう。

「気づく」とは、顧客が今どのような気持ちなのかを常に感じ取ろうとする力である。

「気づくことで初めて人は行動に移すことができます。お客さまの気持ちに気づかなかったために、満足はおろか、お客さまの不安や不信を増大させ、最終的にクレームにまでつながる可能性もあります。気づく力を身に付けるためには、お客さまの気持ちに絶えず意識を向けて対応する経験を積み重ねることが必要でしょう。アンテナを常に張り巡らし、今、どのような気持ちなのか感じ取ろうと繰り返す中で、自然に備わってきます」と浜田氏は言う。