ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

メッセージを伝えるための本質を追究する

第3回<br />「マッキンゼーのスライドは白黒」は都市伝説<br />経営学にも欠かせない、本質を見抜く力とは?

 拙著『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の表紙をご覧いただいた方にとって、まず目につくのが“例の帯”です。

 ここで著者がよく使う言い訳は、まさにアイドルコンテストに参加した将来のアイドル候補が、「弟が勝手に応募したので……」と口にするように、「編集者が勝手に書いたので……」とするのが常日頃かと思います。

 正直、客寄せパンダのように自分の歴史を使うのはいかがなものかと思ったのも事実です。しかし、「帯で恥をかくかどうか」は本質ではなく、本質は「本の中に書いてある、自分が伝えたい事実や考えを、どれだけ多くの人に届けることができるか」であると考えました。

 そして、むしろ私から編集者を焚き付けて、「より多くの人に書店で手にとっていただきき、中身を吟味してもらえる帯」を熟慮してもらった結果、この「マッキンゼー×オックスフォード大学Ph.D.×経営者」という、不躾な、しかし私の経歴の目立つ部分を端的に表す帯が登場しました。

 自分の過去を隠すことはできません。もちろん、もっと恥ずかしい過去も含めて、私は自分の歩んできた道に誇りを持っています。

 1つひとつの失敗や、多くの方々からいただいたお叱りの言葉が、今の自分をつくっているのが事実です。重要なのは本質であり、その中身であるべきなのです。

 さて、この長々しい前置きがこの記事のタイトルにどう関係してくるのでしょうか。

 そろそろ本題に入りたいと思います。