ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

学生時代に3つの会社を起業した経験

 私は現在、立命館大学の経営学部国際経営学科で准教授をしています。経営学部だけあり、多くの学生がいつかは起業したいと考えているようで、ときおり私も相談に乗っています。

 実は私も、学生時代に小さな会社を3つ経営するという経験をしました。

 それは世の中の標準からすれば、起業したなどと仰々しいことは言えない規模の会社なのかもしれません。しかし、責任ある仕事に全体を見通せる形で関わり、成果につなげたことは、自分の大きな成長につながりました。

 もちろん、学生時代に起業することは、ある特定の、非常に特殊な状況下においてしか、有意義な結果にはつながらないでしょう。そのため、誰にでもおすすめすることではありません。

 一方で、ともに苦闘した友人たちとは、今でも当時のことを懐かしく語り合う関係です。当時経験したことは、その後にコンサルタントとして働くときも、そして研究者となった現在の自分にも大きく活かされていることは間違いありません。

 そこで、もうかなり昔の話となりますが、今回は当時のことを少しだけ振り返ってみたいと思います。