グーグル会長・エリック・シュミット氏初の著書『第五の権力―Googleには見えている未来』の序章を公開。第4回はデジタル新時代の戦争や復興、そしてテクノロジーが果たす役割について、著者が現地に赴き、肌で感じたことを述べる。

誰もがつながる世界で、
戦争や外交、革命はどう変わるのか

私たち2人が初めて会ったのは、2009年の秋のことだった。

バグダッドにいた私たちは、テクノロジーを社会の復興に役立てるという重要な課題に、イラク人とともに取り組んでいた。

政府閣僚や軍の指導者、外交官、イラクの起業家らと会うために市内を飛び回るうち、イラクの危うい状況が見えてきた。イラクが今後国として復興し、成功を遂げられる見通しは、きわめて厳しいように思われた。

フォーチュン500社に名を連ねるテクノロジー企業のCEOがイラクを訪れるのは、エリック・シュミットが初めてだったため、「なぜグーグルがここにいるのか」という質問が殺到していた。当時は私たちにさえ、グーグルがこの地で何に出くわすのか、どんな成果を挙げるのかはわからない状況だった。

その答えはいきなり現れた。

どこを向いても、モバイル機器が目に飛び込んできたのだ。

これは驚きだった。