2008年は原油価格の高騰で、われわれ車を利用する者はガソリン離れを起こした。その後、サブプライム問題から端を発した世界金融恐慌が勃発し、直接金融にかかわっていなかった自動車をはじめ実体経済は世界中で大きな影響を受けている。ガソリン価格の高騰とそれに引き続く金融恐慌という2つのストレスが世界中で自動車の買い控えという過剰反応を起こしたのだ。

 これらの市場経済の動きは、大きな外傷や手術など肉体的ストレスを受けた場合の人の体の生体反応とよく似ている。

 大学卒業後、私は外科の医局に入局し、数年の初期臨床研修ののち、大学の研究室に配属された。そこでは医学研究科研究生として授業料を払いながら、博士号取得(論文博士)の研究で教官の指導を受ける。

 手術・検査の助手や新米研修医の指導の仕事をしながら、生活費を稼ぐために診療のアルバイトや夜の当直もこなす。そんな毎日に慣れない実験に取り組む日課が加わった。

 私が配属された教室は今回のタイトルに出てくる「セカンドアタック・セオリー」を発表したO先生の教室だった。

「柴田君、血液の白血球はおもしろいよ。白血球は自ら消毒剤と消化酵素を持っていて、病原体を殺して消化するんだ」とO先生。

 「はー」と私。

 「人の血液中の白血球を生きたまま抽出して、さまざまな刺激を与えて何が起こるか調べてごらん」

 「はい!」

「吸血ドクター」

 というわけで、そのテーマが私のミッションとなり実験用の人の血液採取が始まった。生の新鮮な人の血液を毎日50cc集めて白血球だけを取り出す。最初の1~2回は先輩や同僚から血液をいただけるが、やがて目を合わすと「吸血ドクターが来た」といわれ、やむなく研修医のたむろする部屋をノックする。