経済成長が望めず、政府がインフレ転換を目指す今の日本における資産運用の重要性をさわかみ投信の澤上篤人会長は訴える。澤上氏は東証発のニッポン経済応援プロジェクト「+YOU」などを通じて長期投資家の育成に注力中。個人投資家が実践すべき長期投資の形について聞いた。

さわかみ投信会長
澤上篤人

Profile
1947年、愛知県名古屋市生まれ。スイス・キャピタル・インターナショナルや山一證券のファンドアドバイザー等を務める。ピクテ銀行日本代表や同社日本法人の代表取締役等を経て、96年にさわかみ投資顧問を、99年にはさわかみ投信を設立。設立から代表取締役社長を経て、現在は同社会長として長期投資の啓蒙活動に注力。

長期投資家の極意は
安く買って高く売る

──ここのところ、日経平均株価の振れ幅も大きく、個人投資家の中には先行き不安な人も多いのではないかと思いますがいかがでしょうか。

澤上●いやいや逆。われわれ長期投資家にとって暴落は絶好の買い場だから。

 長期投資家の投資手法はとてもシンプルだ。応援したい企業の株価が暴落したらドーンと買って応援団となり、その後株価が上昇して「にわか応援団」、つまりもっと上がりそうだと思って買い始める人たちが出てきたら、徐々に売却して現金化しておく。にわか応援団が去ったとき(=株価下落)にまた応援してドーンと買う。こんなふうに「安く買って高く売る」を繰り返すだけ。その結果として、利益が積み上がっていく。

 ところが多くの投資家は投資とは短期間でもうけること、うまく立ち回って利ざやを抜くことばかりに目が行く。これでは自分の銭のことしか考えない「銭ゲバ」投資になってしまう。ビジネスの世界で自分の利益だけを優先して行動したら総スカンを食うことは身に染みて分かっているのに、投資となると「銭ゲバ」に走りがち。そんなのうまくいくはずがない。

 日本には機関投資家を含め、相場にどう反応するかを株式投資としている人たちばかりで、腹の据わった投資家がいない。相場を追いかけるのは、株式ディーラーとかトレーダーの本業であって、投資家の仕事ではない。早い話、相場が上昇スピードを上げてくるにつれて慌てて飛びつき買いすれば、高値づかみさせられる。高値を買ったはいいが、相場が急落するや、真っ青になって売り逃げに走る。そんな繰り返しでは、投資収益を得られるはずがない。

──そうすると、株価が暴落しているときに目をつぶって買えということですか?

澤上●そうではない。心から応援したい企業であれば株価が暴落していても安心して買えるということだ。自分たちの生活を支えてくれている会社、よりよい未来をつくっていこうとしている会社、こういった生活者としての目線で心から応援したいと思う会社の株を買うのが大事。

 一度でいいから、株価が大きく下げたときに応援するつもりで勇気を出して買ってみれば分かる。安いところで買っておけば少し株価が戻るだけで、いつでも利益を確保できる。それが投資というものなんだけどね。