大きな不満がなければ「満足」に転ぶ?
「顧客満足度調査」の罠

 自社の製品やサービスが消費者からどれだけの支持を獲得しているのか? 最もそれを端的に表しているのがトップライン(売上高)だが、あくまで現時点での結果にすぎず、今後の趨勢まで把握することは難しい。たとえ目の前で隆盛を極めていても、気づかぬうちに世の中の嗜好が変わり、急激に支持率が低下するケースも少なくない。

 そこで、80年代後半頃から多くの企業が注視するようになったのが「顧客満足度(カスタマー・サティスファクション=CS)」と呼ばれる指標だ。自社製品が消費者により高い満足をもたらしていれば、今後も支持率は高止まりするはず…。こう考えるのは、極めて真っ当だと言えよう。

 ところが現実には、CSが高水準を保っているにもかかわらず、売上が下降トレンドを描く製品やサービスも多々見られるという。

顧客満足度が効かない!<br />消費者の潜在意識を浮き彫りにする<br />新指標が注目される理由従来型の顧客満足度調査の限界と、新しい指標の必要性を語る、アイ・エム・ジェイ カスタマーストラテジー室の玉井由美子プランナー Photo:DOL

 このようなギャップは、いったいどうして生じてしまうのだろうか? インターネットを通じてデジタルマーケティングを展開しているアイ・エム・ジェイのカスタマーストラテジー室・玉井由美子プランナーは次のように指摘する。

「CS調査は『この製品・サービスに満足していますか?』と問いかけるもので、特に日本人はとりたてて不満を感じていなければイエスと答えがち。したがって、CSが高いからといって、それだけお客様の満足度も高いとは限らないのが実情です」

 つまり、CSは「不満足度調査」と呼んだほうがリアルなのだ。たとえば、仮にCSが90%に達していたとしたら、10%の消費者が不満を感じていることはほぼ確実だ。とはいえ、けっして90%が満足しているわけではなく、「不満までは抱いていない」という中立層も抱え込んでいるものと思われる。さらに、アイ・エム・ジェイR&D室リサーチユニットの清水準マネージャーは補足する。

「CSが高いからといって、必ずしもその製品やサービスを提供している企業の今後の成長が保障されているわけではありません。こうしたことから、CSに代わる新たな指標として注目度が高まっているのがNPS(ネットプロモータースコア)です」