東日本大震災から3年以上の歳月を経て、防災意識は薄れつつある。だが、遠くない将来に各地で大地震が発生する可能性が指摘され、まったくの無防備ではいられない。そこで、リフォームを機にわが家の耐震化を図るケースが増加中だ。

 マグニチュード7級の首都直下型地震が今後30年以内に7割の確率で発生すると予測されていることは、周知の通り。東日本大震災の約10倍の被害が想定される南海トラフ巨大地震に関しては、さまざまな被害想定が出される一方で、発生時期については正確な予知が困難と有識者は白旗を揚げる。

 言い換えれば、日本国中、いつどこで巨大地震が発生しても不思議はないわけだが、意識しているうちは案外その日が訪れない。油断した頃合いを見計らったかのように、突如として災禍は降り掛かる。思えば、3年前の3月11日もそうであった。

 備えておかなければ、いざという際には命の危険にさらされる。そのことは重々承知していながらも、「いつやって来る」のかは定かでない。それだけに、ついつい日々の忙しさに翻弄され、防災対策を怠っている人も少なくないはずだ。

知っていても
優先順位が低い耐震性

住宅リフォームコンサルタント
尾間 紫
1級建築士、インテリアコーディネーター。30年近く住宅のリフォームやインテリア、プラン設計、工事に関わってきた経験から、本当に満足するリフォームは形ではなく、新しい暮らしをつくることであるという「リライフのリフォーム」を提唱。消費者と事業者をつなぐ懸け橋となるべく、事業者向けの人材育成研修や講演の他、生活情報サイトAll Aboutをはじめテレビ、新聞、雑誌、ウェブなどを通して情報を発信。

 中でもマイホームの耐震化は、相応の費用と手間を要するだけに、腰が重くなりがち。だが、特に1981年以前に建てられた家は、何も手を施さなければ極めて危うい。1級建築士で住宅リフォームコンサルタントの尾間紫氏はこう語る。

「建築に関わる人なら、81年がターニングポイントであることは誰もが認識しています。では、一般的にはどのくらい知られているのか。調査してみたところ、半数以上の人が、81年から新耐震基準が適用されていることを知っている、という結果が出ました」

 情報サービスのオールアバウトが運営する生活トレンド研究所の調査によると、東京、静岡、大阪、兵庫在住の20~59歳の男女のうち、半数以上が81年に新耐震基準が定められたことを把握していたという。東海大地震が危惧されてきた静岡では、際立って認知度が高かった。

「ただ、認知していた人たちの3割は、その点を意識せずに住宅を選んでいました。若い世代を中心に、耐震性能より立地やコストなどの方が優先順位が高くなっているのだと思います」

出所:生活トレンド研究所 「4都府県の防災意識」に関するアンケート調査 2013年12月5日~12月11日実施 4都府県在住の20~59歳の男女計2628人から有効回答

 81年に建築基準法の改正に伴って新耐震基準が定められ、以降に建築された住居は一応安全とされる。ただし、あくまで新耐震基準は震度6級の大地震でも倒壊しないことを目標としたもの。建物のひび割れや傾きを防ぎ、その後も住み続けられることは考慮していない。

 この新耐震基準さえも満たしていないままでは、どれほど危ういか容易に想像できるだろう。だからこそ、国や自治体も助成金や税制優遇などを通じて、耐震化リフォームを推進している。