孫子からクリステンセンまで、3000年に及ぶ古今東西の戦略エッセンスをまとめた書籍『戦略の教室』から、特に有名な10の戦略を紹介する連載。第9回は競争せずに魅力的な新市場を創りだす『ブルー・オーシャン戦略』。成熟企業、斜陽産業でも可能な、新しい金脈を見つける方法とは?

なぜ、シルク・ドゥ・ソレイユは斜陽産業でブレイクしたのか?

斜陽産業のサーカスで売上を一気に伸ばしたシルク・ドゥ・ソレイユ

 火食い芸の大道芸人だったギー・ラリベーテが1984年にカナダで設立したパフォーマンス集団が、世界的に有名なシルク・ドゥ・ソレイユです。この集団は、サーカス業界に君臨するリングリング・ブラザーズ&バーナム&ベイリー・サーカスが100年以上かけて到達した売上高を、わずか20年足らずで達成しています。

 シルク・ドゥ・ソレイユは書籍『ブルー・オーシャン戦略』の冒頭に事例として紹介されていますが、その理由は彼らが斜陽産業で新たな飛躍を成し遂げたからです。

【伝統的なサーカス業界の問題】
・花形パフォーマーの出演料の高騰
・子どもへの他のエンターテインメント(ゲームなど)の影響
・サーカスへの動物愛護団体からの反発

 伝統的なサーカス業界では、客を集める一部の花形パフォーマーに人気が集中してコストが高騰、近年は子ども向けのエンターテインメントが無数に提供されていることで、観客数の減少に歯止めがききませんでした。動物愛護団体からのサーカスへの反発も起こります。

 これらのマイナス要因を乗り越えて、シルク・ドゥ・ソレイユは世界的な成功を収めます。しかも、他のサーカスの顧客を奪わず、業界の大手に戦いを挑むことなくです。

 シルク・ドゥ・ソレイユは大人と法人客というまったく新しい顧客を対象にしており、チケット価格は演劇と同じ水準、従来のサーカスの数倍です。彼らは従来の大手と競争をしないことで高価格・高利益を実現したのです。