今回ご紹介するのは、先般ノーベル物理学賞を受賞した中村修二教授による『ごめん! 青色LED開発者最後の独白!』です。いわゆる「青色LED訴訟」で勤務先だった日亜化学工業と和解した中村教授ですが、この事実をもって「裁判に負けた」と自ら評しています。日本の司法や企業社会に対する教授の思いを赤裸々につづった衝撃作の一部をご紹介します。

中村教授は
何に謝っているのか?

「日本の司法は腐っている」!?<br />ノーベル賞受賞者が語る青色LED訴訟の舞台裏中村修二著『ごめん! 青色LED開発者最後の独白!』「ごめん!」の文字が、力強さを感じさせます。

 青色発光ダイオード(LED)の開発により、赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授とともに2014年のノーベル物理学賞受賞が決まった中村修二・米カリフォルニア大学教授。本書『ごめん! 青色LED開発者最後の独白!』は、その中村氏が05年7月に出版し、氏をして「最後の自著」と言わしめた作品です(実際、それまで中村氏は10タイトルほどの単著を上梓していましたが、『ごめん!』以降は一冊も刊行していません)。

 まず、理系の研究者が著した書籍とは思えない書名が目を引きます。本書は、ひとことで言えば中村氏と彼の古巣である日亜化学工業の特許訴訟をめぐる裁判の克明な記録です。裁判所に提出した「準備書面」や東京高等裁判所が出した「和解勧告書」などの写しも所収し、それらを引用しながら高裁裁判官による判断の「間違い」を証明していく一人称のノンフィクションとも受け取れます。併せて日本の司法制度や企業社会に対する告発の書であり、さらにはマスコミ報道への不信の気持ちも露わにしています。また日本の技術者・研究者に対しては、「文系支配に風穴を開ける」べく、熱い思いやエールを送っています。

 それにしても、なぜ『ごめん!』なのか。誰に対して、何を謝罪しなければならないのでしょう?