『ハゲタカ』シリーズなどで知られる、作家の真山仁さん。デビュー10周年を記念した本連載では、第一弾として、ロングインタビューのダイジェストを全3回に分けてお送りします。今回はその第2回(完全版はcakes掲載)。真山さんの新聞記者時代の先輩である中央公論新社の石田汗太さんが聞き手となり、旧知の仲だからこそ引き出せた各作品への思いや作品づくりの裏側をお楽しみください。常に日本の「今」とともに歩み、作品を送り出してきた真山仁さんと日本の10年を、ともに振り返っていきましょう!

スケールが大きくなっていく
『ハゲタカ』シリーズの今後は?

――『ハゲタカ』シリーズは、どんどんスケールが大きくなっていきます。第4弾『グリード』では、舞台の大半がニューヨークなどアメリカでした。

真山仁という作家の根本にある「記者」の姿<br />いまノンフィクション・ルポのような小説に挑戦中真山仁(まやま・じん)小説家。1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年企業買収をめぐる熱き人間ドラマ『ハゲタカ』でデビュー。2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカ2(『バイアウト』改題)』を原作とするNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』が放映され、大きな反響を呼ぶ。同ドラマは国内外で多数の賞を受賞した。ほかに、地熱発電をテーマにした『マグマ』も、2012年にWOWOWでドラマ化された。その他の著書に、日本の食と農業に斬り込んだ『黙示』、中国での原発建設を描いた『ベイジン』、短篇集『プライド』、3.11後の政治を舞台にした『コラプティオ』、「ハゲタカ」シリーズ第4弾となる『グリード』、『そして、星の輝く夜がくる』などがある。10月30日に新刊『売国』(文藝春秋)を刊行予定。2014年でデビュー10周年を迎えた。【写真:長屋和茂】

真山 スケールを大きくしようという企みは、ありません。ただ、『グリード』では、2008年に発生したリーマン・ショックの真相に迫りつつ、アメリカでメガ・ディールを仕掛けたいと思った結果です。

――実際に、リーマン・ショックの時に、アメリカの巨大メーカーがどこかに買収されたという話はありましたか。記憶にないのですが。

真山 架空です。『ハゲタカ』シリーズは、読者の方がモデル探しをされるのが恒例のようですが、作中の企業は皆、架空です。今回は、アメリカにお灸を据えるためにアメリカ人の魂のような企業を狙ってみようと思いました。

――同時に、リーマン・ショックの深層を掘り下げてもいる。

真山 金融関係者でも、リーマン・ショックの本質が正しく理解できていない気がしていました。また、大きな出来事を正しく把握するには、時間が必要です。様々な意味で機が熟したかなと判断しました。

――実際、リーマン・ショックとは何だったのでしょうか

真山 それは、ぜひ『グリード』を読んでください(笑)!

――『グリード』は、「週刊ダイヤモンド」の連載時には、芝野が『レッドゾーン』の時から取り組んできた東大阪の町工場の再生が織り込まれていましたが、単行本では消えてしまっていましたね。

真山 連載中に、ずっと日本のものづくりを下支えしている町工場の再生のヒントを探し続けて、取材を重ねてきたのですが、結果的に見つけられませんでした。そこで、捲土重来を期して、スピンオフ作品として2015年4月に刊行予定です。

――町工場の再生のヒントを掴んだということですか?

真山 今、世界的にブームになっているある現象が使えるのではないかと考えています。追加取材や資料の読み込みを行った上で、お届けしたいと思っています。