韓国での出版も決まった『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書の中にも登場する起業家たちと語り合う。第4回はグリー株式会社の創業者である田中良和氏の登場だ。

どんなにピンチでも
経営者は正々堂々と
やりきることが大事

田中 この本を読んでとても印象的だったのは、会社が窮地に立った時、社長としてどう行動するかということでした。杉本さんが完璧だったとは言わないけど、最後の最後まで社員の精神的支柱となってやりきったことがすごいと思う。

杉本 なんとか、逃げずにやりました。

田中 たとえばゲーム業界は、不動産のようにレバレッジを効かせてお金を動かすようなことはないですけど、極端な話、100回のチャレンジのうち20回成功させてやっていくような側面がある。逆に言うと、80回の失敗に耐えていく精神力が大事なんです。

起業家対談シリーズ第5回 田中良和<br />「自分だけが大変なわけじゃない」と、気づいた時杉本宏之(すぎもと・ひろゆき)[起業家]1977年生まれ。高校卒業後、住宅販売会社に就職、22歳でトップ営業となる。2001年に退社し、24歳でエスグラントコーポレーションを設立。ワンルームマンションの分譲事業を皮切りに事業を拡大し、総合不動産企業に成長させる。2005年不動産業界史上最年少で上場を果たす。2008年のリーマンショックで業績が悪化、2009年に民事再生を申請、自己破産。その後再起し、エスグラントに匹敵する規模にグループを育て上げた。2014年7月、復活を果たしたのを機に著書『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』を刊行した。

杉本 なるほど。

田中 失敗が続くと心が折れそうになることもあるんだけど、杉本さんは極限の状況の中で最後までやりきった。もちろん会社を倒産させてしまった結果責任を逃れられるわけじゃないけど、正々堂々とやりきったからこそリセットできて、新しいビジネスを応援してくれる仲間がいて、付いてきてくれる社員がいたわけで。この本の醍醐味は、まさにそこにあると思うんです。

杉本 ありがとうございます。本当に人間関係には恵まれました。先日、役員との食事会でも話したんですけど、やっぱり「アランの幸福論にある通り、どんな逆境障害があろうとも、人生は前向きであること」が大事だよね、と。

田中 日本は一度失敗するとチャンスがないというようなことも言われますけど、杉本さんのように若くして努力して成功を経験した人が、意欲を失わずにやり続ければ、結果は付いてくるんだということも、この本を読んで強く感じました。

杉本 お互いに褒め合うみたいで口はばったいし、本人を前にして言うのもなんだけど、田中さんはとくに大切な友人です。まだグリーの社員が数人の頃から親しくて、田中さんのほうがひとつ年上なのに、普段から僕が田中と呼んで、田中さんは僕を杉本さんと呼ぶ不思議な関係で(笑)。ある時期から、GREEがものすごいスピードで成長して、僕や内藤君を抜き去ってスターダムに登り詰めていったんですが、同世代の経営者として目標になる、ありがたい存在です。