風邪をひいた後、長い間鼻汁が出たり、鼻がつまる、粘り気のある鼻汁がノドにひっかかる感じがすることはないだろうか。そのような症状がみられたら、副鼻腔炎の可能性がある。かつて蓄膿症と呼ばれた一般的な慢性副鼻腔炎は、近年では、抗生剤の少量長期内服で、かなり改善できるようになった。その一方で、喘息合併が多い難治性の好酸球性副鼻腔炎は増加傾向だ。そんな日本人が鼻の病気としてよくかかる副鼻腔炎への正しい対処法、そして増加している好酸球性副鼻腔炎について、東京慈恵会医科大学の森山 寛名誉教授に話を聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト 渡邉芳裕)

長引く鼻汁・鼻づまりに要注意!
慢性化すると「手術」という最悪の状態に

長引く鼻汁、鼻づまりが病気のサイン!<br />ただの風邪と放置すると危険な「副鼻腔炎」<br />――東京慈恵会医科大学・森山寛名誉教授に聞く森山寛(もりやま・ひろし)
東京慈恵会医科大学名誉教授、東京慈恵会医科大学附属病院 前病院長。1973年東京慈恵会医科大学卒、81年米国コロンビア大学耳鼻咽喉科へ留学し、90年東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室助教授、92年から同教授に。2004年から13年3月まで同大学附属病院院長を務め、13年4月から現職、現在に至る。鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡手術の国際的パイオニアのひとり。

――日本人がよくかかる「副鼻腔炎」とはどのような病気なのですか?

 副鼻腔炎について詳しく説明する前に、副鼻腔がどのような仕組みになっているのか紹介しておきましょう。実は、鼻の内部は、みなさんが思っている以上に複雑な構造になっています。まず、鼻から吸い込んだ空気がのどに抜けるときに通る大きな空洞が「鼻腔」です。そして、この鼻腔の周囲に、「上顎洞(じょうがくどう)」「篩骨洞(しこつどう)」「前頭洞(ぜんとうどう)」「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」という4対の空洞があり、これらを総称して「副鼻腔」といいます。これらの副鼻腔は自然口(狭い孔)を通して鼻腔とつながっています。

 副鼻腔の内側の壁は、薄い粘膜に覆われており、線毛という細かい毛が生えています。副鼻腔炎とは、風邪などによってウイルスや細菌が感染し、この副鼻腔の粘膜に炎症が起きている状態です。通常、鼻腔や副鼻腔の線毛は、空気中の埃(ほこり)やウイルスをつかまえて、排出してくれますが、副鼻腔炎になると、こうした機能が働かなくなり、副鼻腔の中に膿がたまってきて、鼻汁の量が増えたり、鼻が詰まったりします。この状態が「急性副鼻腔炎」になります。さらに、こうした状態が3ヵ月以上続いた場合、「慢性副鼻腔炎」と診断されます。

長引く鼻汁、鼻づまりが病気のサイン!<br />ただの風邪と放置すると危険な「副鼻腔炎」<br />――東京慈恵会医科大学・森山寛名誉教授に聞く