2015年は本格的景気回復の年となるのか。今後の金利の動向とその影響、政府の「第三の矢」の実効性、巨額の個人保有金融資産の活用について、東京大学大学院経済学研究科の伊藤元重教授に聞いた。

実質マイナス金利が
景気回復の起動装置に

——日本経済の現状と課題をどう捉えればよいでしょうか。

ito_main東京大学大学院 経済学研究科
伊藤元重 教授
1951年、静岡県生まれ。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。著書に『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)他多数。

伊藤 現時点での日本経済を見ると、デフレが確実に解消に向かっている中で、アンバランスな状況が生まれています。

 それは、企業の収益が過去最高水準にもかかわらず、投資は非常に低調な水準にあり、消費も依然低迷していて、一般の人に景気上昇の実感が生まれていない、といった点です。

 ただ、これはある程度必然的な現象、いわゆるシークエンスといわれるものであり、経済政策が実体経済に反映されるには“順番”があるということです。

 アベノミクスも早く熱しやすいところ、為替・株価・雇用・政府税収などにはその効果が早くから表れていますが、温まりにくい部分、例えば、消費・設備投資・輸出などが上向くには少し時間がかかり、かつ、この部分が伸びてこないと経済の順調な回復とはいえないのです。

 ここが2015年の経済が力強い回復を実現するための課題といえます。