上司ならぬ「情師」こそが、<br />若手社員のやる気を引き出し、戦力化できる
リクルート ワークス研究所 豊田義博氏の著作『戦略的「愛社精神」のススメ』

 リクルート ワークス研究所の豊田義博・主任研究員がこのほど上梓した『戦略的「愛社精神」のススメ』は、愛社精神という、いささか時代錯誤めいた概念を再定義し、組織と個人の新しい関係について有益な提言をする刺激的な本です。

 豊田氏は、若手を定着させ、成長を促すためにも、上司は「情師」となって、愛社精神を育み、やる気を引き出すマネジメントを実行するべきである、と説いています。

 今回は、豊田氏に適度なかまい方について聞きました。

組織と個人とが
ドライでクールな関係になった

 「あなたは愛社精神を持っていますか?」

 そう聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか。

 会社がとことん嫌いであれば10年も20年もそこで働き続けられないでしょうから、一定年数在籍しているとすれば、会社に愛着を抱いていないわけではないでしょう。

 でも、私もそうですが、会社に対しては手放しで「好き!」と言えない、複雑な思いもありますね。

おそらく、それが普通なのだと思います。

 すこし違った見方をすると、私たちが企業で働いてきた20年余りで、組織と個人とは、ずいぶんドライでクールな関係になったとも言えます。

 だからこそ、「私には愛社精神があります!」とは、ためらいなくして言えないのかもしれません。

 著書『戦略的「愛社精神」のススメ』のなかで、リクルート ワークス研究所の豊田義博さんは指摘します。

 「能力ある人材は、自分の市場価値を高めるために、キャリア・アップ=転職を重ねるようになった。「就社」ではなく「就職」の時代となり、人は同じ会社でキャリアを積み重ねるのではなく、ひとつの職種を自身の専門としてキャリアを重ねるようになった。愛社精神という言葉はもはや過去のものである。そんなものを従業員に求める時代は終わったのだ……そんな声が、世の中に満ち溢れている」

 ではなぜ、いまあらためて「愛社精神」なのでしょうか?