新卒採用の面接官は、どのような姿勢で学生と相対し、人物を見抜くのか。一回の面接プロセスを4つのフェーズに分け、解説する。

面接は「ゴールの決まった対話」

 唐突な話になるが、皆さんは、インタビューと取材の違いが何かわかるだろうか?実は私も最近まではあまり意識しないで二つの言葉を使っていた。

 あるプロのライターさんの本を読んでいると、「インタビューの主役はインタビュイー(話し手)の言葉である。それに対して取材は、インタビュイーが話す内容や意味が主役となる」というのだ。

 話し手か、話した内容にポイントがあるかの違いである。

 そう考えると、採用担当者が行う面接は、取材ではなくてあくまでもインタビューである。就活生が話す内容ではなく、語る本人を見ようとするからである。

 聞き手が田原総一朗、黒柳徹子、阿川佐和子の各氏であれば、同じ人からでもそれぞれ異なった話を引き出すことになるだろう。インタビューは、聞き手と話し手のキャッチボールだからだ。

 一方で、面接する側にとっては、目の前にいる学生が、「自分の同僚や部下として一緒に働けるかどうかを見極める」というゴールが決まった対話である。そのため質問の内容や面接の進め方は多様であっても、パターンはおのずから決まっている。

 採用の合否を決める面接は、大まかに言って下記の4つのフェーズで成り立っている。ここでは、最終面接をイメージしているが、そのほかの面接でもある程度共通している。

 人事担当者は自分が行っている面接と比較してもらいたい。面接の全体像を俯瞰した上で場数を踏めば、さらに有効なインタビューが行えることになるだろう。

(1)第一印象フェーズ

 人と人とのコミュニケーションでは、言葉だけで伝わるのは1割未満であるとの調査があるそうだ。広告会社の採用責任者は私に、「採用基準は、第一印象」と断言していた。

 しかし彼の発言をそのまま学生に伝えるのは少し不親切だ。面接の中で当初のイメージが変化する人も少なくないからである。

 ただ「表情」「しぐさ」「話し方」「雰囲気」は、かなりインパクトがあるのは間違いない。その人の人生の充実度が対面した時に伝わってくることがあるからだ。それが、「彼と一緒に働きたい」という判断に影響を与える。

 面接の初めは、「外は寒くはなかったですか?」「自宅からここまでどれくらい時間がかかりましたか?」などという軽い会話から始めるといいだろう。いきなり「志望動機は?」と聞くよりも、エンジンをある程度かけてから本題に入る方が、会話が弾みやすいからだ。

 そして最初は簡単な自己紹介を求めることが多いだろう。面接者は自己紹介を聞きながら、履歴書やエントリーシート(ES)に目を通して、本人の経歴やゼミ、所属するサークルなどを確認する。第一印象を意識しながら質問する内容を考えている。

 用意してきた自己紹介を勢い込んで話す学生は少なくないが、できる人は短く切り上げる。ダラダラした話を続けると面接者のリズムを崩すと察するからである。