「人生90年時代」といわれる。仕事人生を終えた後も、長い長い老後が待っている。50代になったら“人生の折り返し地点を過ぎた”と考え、後半人生にふさわしい住まいを探してみるのもいい。シニア住み替えの極意を、住宅評論家の櫻井幸雄氏に聞いた。

シニアの住み替えを
4タイプで考える

 最近、住宅市場では、「シニアの元気がいい」「よく動いている」という話を聞く。

 都心のタワーマンション販売センターをのぞくと、若い世代よりも、熟年以降の落ち着いた年格好が多かったりする。若い世代の住宅取得意欲が淡泊になっているのとは、対照的だ。

 しかし、高齢者やプレ高齢者が一斉に動いているかというと、そうでもないらしい。人により、人生後半戦の住まい選びは違っているようだ。

「確かにシニア世代には、老夫婦2人で郊外の広い戸建てを維持し続けるのは大変だから、駅に近く生活が便利なマンションに住み替えたいニーズがあります。しかし、住み替えはニーズだけで成立するわけではありません。さまざまな世帯の事情が絡んでおり、住み替えがうまくいくシニアと、そうでない場合が生じているのです」と、住宅評論家の櫻井幸雄氏。

 その理由と対策を、「売って住み替え」型、「譲って住み替え」型、「小さく住み替え」型、「郊外に住み替え」型の4タイプに分けて解説してもらった。

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郊外から駅のそばへ
売って住み替えは困難

 まず、従来から希望が多かった、「郊外の広い一戸建てを売って、駅のそばの便利なマンションへ」という住み替え。

「これは今、難しいですね。郊外の広い戸建てが、非常に売りづらくなっています。売れても安い価格でしかないので、便利の良い駅の近くのマンションを買おうと思っても、金額が届かない。そもそもシニアの夫婦で、多額の住宅ローンを借りようという人などいません」(櫻井氏、以下同)

「売って住み替え」型が困難なのは、一つには郊外で、駅から遠い戸建てが不人気だから。もう一つは駅に近い便利なマンションが値上がりしているから。住んでいる場所のギャップがネックになるのだ。

「都心マンションに住んでいれば、話は別ですよ。都心の住まいには『貸す』という手があります。ニューヨークにしても、パリ、ロンドンにしても、世界的な大都市は買いたくても買えない、住みたければ借りる、が常識。日本もだんだんその状況に近づいているから、富裕層は競って都心の高額マンションを買っているのです。資産形成と相続対策ですね」