ホワイトカラー労働者の労働時間規制の適用を除外する「ホワイトカラーエグゼンプション」が法制化されようとしている。企業が同制度を導入する場合、これまで以上に、成果を報酬に適正に反映できる評価制度が必要となる。そこで、タレントマネジメントシステムを提供するサムトータル・システムズの平野正信氏に、評価制度を見直す際のポイントを聞いた。

従業員の訴訟リスクに備える

 ホワイトカラーエグゼンプションは、ホワイトカラー労働者の労働時間規制の適用を外し、労働時間に関係なく、成果に対して報酬を支払う制度である。欧米ではすでに導入されており、日本でも2000年代半ばに導入が議論されたが法案化に至らず、今年になって「高度プロフェッショナル制度」として復活。4月に閣議決定され、法案が国会に提出された。

 法案では、年収1075万円以上(予定)で、高度の専門的知識を必要とする業務に従事する労働者が対象となっている。国会で成立すれば、2016年4月に施行される予定だ(2015年5月末現在)。

 制度が施行された場合、企業は評価制度の見直しが必要になると、平野氏は語る。

サムトータル・システムズ
平野 正信 代表取締役社長

「ホワイトカラーエグゼンプションが導入されると、企業は対象となる社員の成果を適正に評価し、報酬に反映させる必要があります。評価制度が曖昧なままでは、従業員から訴訟を起こされるリスクがあるからです」

 アメリカの場合、1938年にホワイトカラーエグゼンプションが導入されて以来、改良を重ねて今日に至っているが、最近も残業代の支払いを求める訴訟が相次いで起きている。そのため、制度の見直しが検討されており、制度運用の難しさがうかがえる。

「このような社員とのトラブルを未然に防ぐための有効な方法は、評価に必要な記録をしっかりと残しておくことです。日本国内で過去に起きた労働時間にまつわる訴訟例を見ると、過去の記録が曖昧なために訴訟に至ったケースが多い」ということだ。

 双方の言い分が食い違った場合、根拠となる事実の裏づけが重要になる。最新のITで構成された評価システムを導入すれば、継続的にデータを保管できる。その結果、データに基づいた客観的な評価を導き出しやすくなり、無用な争いを避けられる。

「ただ、成果主義自体は問題点ばかりではありません。本来の目的に沿った検討がなされるべきです。例えばですが、成果主義を全く導入しないで、あなたの会社は10年後、20年後に生き残れますか?従業員のグローバル化、多様化が確実な中、成果主義の導入は不可欠なものです」

 ホワイトカラーエグゼンプションは、年収の高い社員、すなわち有能な人が対象となる。有能でハイパフォーマーな人材向けに客観的な評価システムを導入することは、リスクヘッジということより、社内の優秀な人材とその能力を把握し、組織全体の生産性の向上に役立てられるというメリットがある。