ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた、情報のプロが最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。

自社を発展させるヒントは
「ビジネスモデル」の仕組みにあり

前回は、組織を担うビジネスパーソンが意識しておかなくてはならない3つのビジネステーマの1つめとして「未来予測」を取り上げた。「中長期を見据えることで初めて今が見えてくる」という思考の重要性がポイントであった。

 2つめのテーマは「ビジネスモデル」である。「ビジネスモデル」とはシンプルに「ビジネスを成功させるための仕組み」とここでは定義しておこう。

 優れた会社は驚くほど多様な業界のビジネスモデルを非常に熱心に研究している。そして自分の会社の発展に活かすために、ヒントを貪欲に探索している。

 それこそがビジネスモデルを学ばなくてはならない最大の理由だ。

 2012年2月に発売された『ビジネスモデル・ジェネレーション』(翔泳社)は大きな話題を呼んだ。ちなみにこの書籍は翻訳前から日本を代表する企業において読書会が開催されていたというエピソードもある。

 私も未翻訳の海外ベストセラーには常に注目しているが、特にビジネスモデルはアメリカで誕生、派生したものが数多いこともあり、アメリカのベストセラーを翻訳前に他者に先んじて読むことは大きなアドバンテージになる(英語力はここでも使える)。

 ビジネスパーソンは「視野を広く持つ」ことが重要で、人材育成に携わる方こそこのことを常に意識しておく必要がある。言うは易し行うは難しだが、さまざまな「ビジネスモデル」を学ぶことは実は最も視野を広げる有効な手段といえよう。

「Amazon vs 楽天」「既存通信会社 vs Skype」……こうした対立概念・競争環境もお気づきの通り、ビジネスモデルのぶつかり合いだ。

 自社のビジネスモデルや利益創出の仕組みはよくご存知だと思う。それが周辺業界や取引先、あるいは海外や異業種となるとどうだろう? 私の率直な感想としては、日本企業はビジネスモデルに対する研究が少し足りない印象を持っている。

 注目企業や成長産業の特集記事を見た際に、「この会社のビジネスモデルはどうなっているか」「なぜこの業界は伸長しているのか」という視点を欠かさないことが重要だ。
 ビジネスのヒントはどこに転がっているかわからないが、意識していないことには絶対に視界に入ってこない。

 人材育成プログラムにおいて、さまざまな業界、特に畑違いの業界のビジネスモデル研究を採用する企業は増えていくのではないか。

 今後も「ビジネスモデル」関連の書籍は多く上梓されていくであろう。「戦略」や「仕組み」という言葉に置き換わっているものも含め、注視しておくことをお薦めしておく。