能力遺伝子検査、我が子に受けさせるべきか否か遺伝子検査ビジネスは日本でもメジャーになりつつある

「乳がんになる確率が87%、卵巣がんになる確率が50%」と医師から説明を受けたアンジェリーナ・ジョリーが、2013年5月14日、「熟慮の末に乳がん予防のための両乳房切除手術を受けた」と明かしたことを受け、日本でも遺伝子検査に俄然注目が集まった。

 さらに、今年の3月14日には、同女史は「卵巣と卵管を摘出する予防手術を受けた」ことを打ち明けている。

 その間、遺伝子検査に関連して日本で起こった象徴的な出来事と言えば、DeNAやヤフー、ファンケル、DHCといった名立たる企業が遺伝子解析ビジネスへの参入を表明したことだろう。

遺伝子検査ビジネスと医学界
両者に生まれた大きな溝

 その後、2014年2月には、消費者向け遺伝子検査に関する報告書として、「再生医療による経済効果及び再生医療等の事業環境整備に関する調査」「遺伝子検査ビジネスに関する調査」と題した報告書が、経済産業省から出ている。この調査の一環として、経済産業省と厚生労働省の課長クラスをオブザーバーとする「遺伝子検査ビジネスに関する研究会」が設置され、そのメンバーには学識経験者だけでなく、すでに遺伝子解析ビジネスに参入を予定していたソニー、ヤフーなどからも選ばれている。

 しかし、ちょうどその1年後に当たる今年(2015年)の2月に開かれた厚生科学審議会(厚生労働省)では、医学界からの批判が噴出したという。その後も医学界との溝が埋まらないまま推移したようで、今年の秋にも事業者に対する認定制度がスタートすることから、医学会から(業を煮やしたのか)この5月19日になって「待った」が掛かった。

 そもそも遺伝子解析サービスは、「医療ではない」という位置付けで、各社とも「医療に当たらない範囲でサービスを手掛ける」と明言している。このため、遺伝子解析サービスについては当初から経済産業省に一任していた厚生労働省にとっては、医学界からのここまでの反発は予想外だったようだ。結局、初手として、北里大学の教授(「遺伝子検査ビジネスに関する研究会」のメンバー)を中心に研究会を設置し、早急に報告書を作成するという。

 いずれにせよ、遺伝子検査が近い将来に於ける予防医学の選択肢となるかどうか、俄かに雲行きが怪しくなってきている。

 件のアンジェリーナ・ジョリーは手記の中で、〈……どんな健康問題に関しても、対策は一つではありません。いちばん大切なことは、選択肢について知り、その中から自分の個性に合ったものを選ぶことです〉と、自分以外の女性には別の選択肢もあることを強調している。少なくとも、「医療機関を通じてであればOK」「医師と相談の上であればOK」というような、安易な決着の付け方を望む消費者は皆無に近いと推断するが、いかがだろうか?