新聞やTVの断片的な情報だけでは、めまぐるしく変わる世界情勢は根本的には理解できない。ニュースの前に、知っておくべき基礎知識というのがある。
私の『アメリカ、ロシア、中国、イスラム圏を知れば、この複雑な世界が手に取るようにわかる』という著書の中で、この「知っておくべき」基礎知識を集めたが、その中の1つ、日米安保条約の現在を紹介する。アメリカが弱体化しているかもしれない、と言われる現在、知っておくべきポイントである。

尖閣諸島に中国が介入すれば、
本当に日米安保条約は発動されるのか?

 2012年、アメリカのパネッタ国防長官が来日した際、日米会談の席で、「アメリカは主権に関する紛争で、いずれの肩も持たない」と述べた。

 つまり、尖閣諸島問題に日米安保は関係なく、中国と衝突しても米軍は出さないとの宣言である。この発言は、日米安保や基地を抱える日本を動揺させた。ちなみに、アメリカが沖縄の基地にこだわる理由は、ソウルや北京、上海やマニラなどアジアの要所に短時間でいける戦略地点だからである。

 中立的な立場を示したアメリカだったが、その2年後の2014年、4月に来日したヘーゲル国防長官は、会談終了後の共同記者会見の冒頭で、紙を読まずに正面を向いたままこう述べた。

「米国は一方的で抑圧的な行動、日本の政権を軽視する行動に反対の立場をとる」。

 この発言により、安保条約は発動されると明言されたといえる。ヘーゲル長官は、尖閣諸島で米国は「中立」だと中国が誤解しているという疑念を払拭させるため、明確に言ったのだ。これは日本にとっては「大きな前進であり収穫だった」。

 続いて2週間後、国賓として来日したオバマ大統領も、安倍首相との首脳会談の席で、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であることを名言した。
そして、首脳会談後の記者会見において「日本の施政下にある領域は、尖閣諸島も含め日米安全保障の適用対象になる」と名言。武力衝突が起きた際は、米国に防衛する義務があることを明らかにしたのだった。