営業力がなくても売れる話を前々回にしましたが、今回は、売れない商品をいかに売るか、がテーマです。これは誰でもできることではありませんが、売れない商品を売ってこそ、真のセールスと言っていいでしょう。売れない商品を売れる商品に変えるには、安くすればいいってものではありません。それ以外の価値を見い出すのです。
7月17日発売『セールスは1分で決まる!』連載第9回。

売れない商品に「同情」を生ませる

ネガティブ×ネガティブ=???

 連載の第7回「営業力がなくても、商品力を借りれば売れる!」で、新人は売れている商品を売ればいいとお伝えしました。

 しかし、誰もが売れている商品ばかりを売っていては、いけません。

中堅・ベテラン組は営業力を発揮して、売れている商品以外の商品を売ってほしいものです。

 言葉を言い換えると、売れない商品を売ってこそ、真のセールスといっていいでしょう。

 会社が活動する中で、商品を販売していると、どんなに厳選した商品でも売れる商品と売れない商品が出てきます。

 会社にとって、この売れないものをどう売るかは悩みのタネです。

「この在庫、何とかして売れないかな?」と上司から相談を受けました。

「これ売れてないですよね。売れない商品をキャンペーンにしても、お客様は喜ばないですよ」
「価格を下げたらどうだろう?」
「価格を多少下げても難しいです」

お客様が商品の良さに気がついていない場合などは、「こんな使い方ができますよ」とか「こんな効果もあるんですよ」と説明して販売促進することも可能ですが、そうでない場合は、売る方法がないのです。

 お客様が必要のないものを売ることになるわけですから、大変なことです。

 しばらく考えた私は、言いました。

「これすべて売れ残り商品ですよね。正直にそう言って売りましょう」
「売れ残りです、なんて言って売れるわけないだろ!」と、上司には一喝されました。

 しかし、どんなにきれいごとを並べても、売れ残りは売れ残りなのです。その現実は私たちもお客様も分かっているのです。

 どうせなら売れ残りを大集合させて販売したほうがいいと考えました。

「これを、『かわいそうな、お在庫セット』にして格安で売りましょう」
上司は最後まで、「そんなことしたらクレームが来るよ」と心配していましたが、私はこの「お在庫キャンペーン」を決行しました。

 私は、このキャンペーンを成功させるためにチラシやPOPを工夫しました。

 今までにない「ネガティブキャンペーン」です。

 ネガティブを少しでもポジティブに見せるのではなく、ネガティブを猛アピールしたのです。

 ポイントは「同情」です。

私への同情ではなく、商品に同情を寄せてもらわなくてはいけません。売れ残り商品になり切って、その気持ちをそのまま言葉にしました。

 このままでは、処分されてしまう哀れな運命を言葉に表すのです。

【史上初! お在庫セット(売れ残り)キャンペーン】
私たちは日本での“売れ残り”です。
哀れなお在庫たちです。
どなたか引き取ってくださ〜い。
処分前の最後のチャンスなんです〜〜。
★のっぴきならない事情で、こんなキャンペーンやっちゃってごめんなさい。★
                           By 宮崎

 そして、商品ごとにコメントを書きました。

「私は鳴り物入りでフランスから来たのに、色が派手過ぎると言って日本の方に嫌がられました(泣)。でもパーティーのときにはこの色がとても目立ってすてきなんですよ〜」

「私は、1年前に誕生したのですが、香りが嫌いと言われてしまいました。フランスではこの香り大人気なのに〜〜。このままだと捨てられちゃいます(大泣)」

 ここで一つ大切なのは、言葉だけ見るとネガティブのオンパレードで暗くなるので、(涙)(泣)のマークや、注文が来て喜んでいる商品のかわいいイラストを入れることです。

「言葉をできるだけ暗く、見た目は明るく」がポイント。パッと見て、見た目が暗いとお客様は見てくれません。お客様が見て、最初「何? これ?」と思っても、思わず「プッ」と笑っちゃうようなちゃめっ気が必要です。

 そしてこの「お在庫キャンペーン」は全国一斉に行うのではなく、対象地域を限定して行いました。

 もちろん理由があります。このお在庫セットが好評だったら、「怒られると思ったのに○○地区で大好評だった、お在庫キャンペーンです。再登場!」と他の地域にさらなるアピールができるのです。

 もし、失敗しても少ないコストで済みます。利益を生まない商品にムダなコストはかけられません。予想した通り、すぐにお客様から反響がありました。

「かわいそうなお在庫を引き取ってくれる人を探しているんです」
「これ、全部売れ残りでしょ?」
「そうなんですよ、書いてある通り、売れ残り君たちです。プレゼントに使うのもいいと思うんですよ」

 みんなが嫌と言うものでも、欲しいと思う人がいるかもしれない。

「そうね。確かに安いから、クリスマスにこの中から好きなものをプレゼントしてもいいわね」
「そうです、そうです。自分では買わないけど、もらったらうれしいものもありますから」

 このお客様は、3セットも購入してくれました。

 商品にはそれぞれ価値があるのです。私は、この売れない商品に、「お客様に同情してもらえる価値」を見つけたのです。

 商品にとっても倉庫でずっと放置され、最後は処分されるより、安くてもお客様に引き取っていただき活用してもらうほうが何倍も幸せなのです。

 売れない商品にもう一度目を向けてみると、別の価値が見つかるかもしれません。

POINT

売れないから売れない商品。
ネガティブを猛アピールし、
お客様に同情してもらう価値を見いだしましょう!