大統領の指針ともなる最高情報機関・米国国家会議(NIC)。CIA、国防総省、国土安全保障省――米国16の情報機関のデータを統括するNICトップ分析官が辞任後、初めて著した全米話題作『シフト 2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』が11月19日に発売された。在任中には明かせなかった政治・経済・軍事・テクノロジーなど、多岐に渡る分析のなかから本連載では、そのエッセンスを紹介する。

第6回では、ヨーロッパの未来の勢力図を分析する。現在、圧倒的な経済力を誇るドイツだが、その先行きは決して明るくない。イギリス、ドイツ、ロシア……欧州の「大国」の未来とは。

イギリスの復活とドイツの凋落?

 『グローバル・トレンド』で使った国力の評価基準「インターナショナル・フューチャーズ」によれば、ヨーロッパは相対的に衰退している。多くのヨーロッパ諸国では高齢化が進み、一部諸国では人口が減り、ヨーロッパ全体の成長は鈍化するだろう。

15年後、イギリスはドイツを越えた欧州最大の経済国に返り咲く

 経済が好調なドイツは、当面はEUのリーダーの役割を果たすだろうが、少子高齢化という時限爆弾を抱えている。現在、ドイツの人口はフランスやイギリスよりも多いが、2050年までに逆転する可能性がある。フランスとイギリスのほうが移民が多いからだ。

 最新のCEBRの予測では、イギリスは2030年までに西ヨーロッパ最大の経済大国になりそうだ。イギリスの人口動態がドイツよりも好ましいことがその一因となっている。

 人口の平均年齢が45歳を超える「ポスト熟年国」(多くはヨーロッパにある)は、十分な所得のない高齢者に適切な生活支援を行う一方で、それを支える若い世代の生活水準も維持する財源を確保しなければならない

 賦課方式の年金制度と医療保険制度を、もっと財政基盤のしっかりした制度に移行させる動きはあるが、政治的に大きな反発に遭っている。こうした改革では、支給対象者と支給額が減り、勤労者の負担が増え、給付資格を得るために必要な就労期間は延びるからだ。