東日本大震災後、原子力発電への風向きが悪くなっても、なお原発再稼働に固執してきた関西電力。その戦略は正しかったのか。2016年、その成否が判明することになる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

「原発と心中」とやゆされてきた関西電力の戦略の成否が、とうとう判明することになりそうだ。

 心中といわれるのは、東日本大震災後に原子力発電への逆風が強まっても、もともと原発依存度が50%を超え、業界内で原発比率が最も高かった関電は、原発再稼働へ向けて全精力を注いできたからだ。他の電力会社が原発に代わる電源の整備を急ピッチで進める中で、その姿は際立っていた。

 関電にとって心中戦略を推し進めてきた震災後の4年間は、まさに綱渡りの経営だった。

 4期連続で最終赤字に沈むなど、関電の財務体質は急速に弱体化していた。原発が動かせないため、足りない電力を賄うのに火力発電所を稼働させねばならず、その燃料費がのしかかったことが主な原因だった。

 2012年3月期に2422億円の最終赤字へ転落してから、15年3月期まで4期累計で積み上がった赤字は7313億円。13年5月に電気料金の値上げを実施したが、膨れ上がる燃料費を前に、なすすべはなかった。

 震災直後の11年3月期末に連結で24.8%あった自己資本比率も、15年3月期末には13.4%まで下落。単体では9.4%と、危険水域にまで達した。

 このころには、最悪のシナリオもささやかれ始めていた。それが債務超過への転落だ。

 16年3月期以降も原発が動かせず、赤字体質から抜け出せないならば、15年3月期末に単体で4764億円計上していた繰り延べ税金資産を取り崩し、債務超過に陥るとの危険性が業界内で指摘されるほどだった。

 一方、頼みの綱である原発を取り巻く環境はいっこうに好転せず、むしろ悪化するばかり。原子力規制委員会の審査に合格し再稼働が見えていた福井県の高浜原発3、4号機は、15年4月に地元住民が福井地方裁判所に提訴した運転差し止めの申し立てが認められ、同年11月に再稼働というもくろみはもろくも崩れ去った。

 万事休すの状況だったが、ここで関電を救ったのは、2度目の電気料金の値上げ認可と、資源価格急落だった。値上げと火力発電の燃料費負担が軽くなったことで、利幅が劇的に改善。ついに、15年9月の中間決算で、連結で1125億円の最終黒字を達成。自己資本比率も連結で15.6%、単体では11.3%と2桁に乗せた。

 関電は原発再稼働などの状況が見通せないことから、今期の業績予想は未定としている。ただ、原発再稼働を果たせなくても、値上げと資源安の恩恵を受け、通期で1100億~1500億円の経常利益が出せると市場関係者は予想している。