不正会計を繰り返してきた東芝の財務悪化が一気に浮き彫りになった。先送りにしてきたリストラ費用がかさみ、企業としての存続の危機に陥っている。今後のシナリオを追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

「財務体質の毀損は深刻だ。大変不本意で、深く責任を感じている」

 東芝の室町正志社長は、昨年12月末の構造改革策の説明会でこう発言した。発表は、白物家電やパソコンなどライフスタイル事業の整理を中心とする事業見直しが主眼だったが、同時に浮き彫りになったのは、東芝の財務の危機的状況だった。

 この日公表された2016年3月期の連結業績見通しは、営業損失が3400億円、当期純損失が5500億円と、過去最大の赤字幅となった。室町社長が「半年前にはこれほどの構造改革費用が掛かるとは思っていなかった」と打ち明けるように、リストラに伴う費用が、予想以上に響いた形だ。

 内訳は、ライフスタイルや半導体事業での人員削減などが約2300億円、税金が将来回収できるのを見込んで計上する繰延税金資産の取り崩しが約2600億円、さらに送配電事業などの資産評価減が約1100億円となった。

 もっとも、言うまでもないが、不正会計の発覚を機に業績が急激に悪化したわけではない。むしろ、これまで不正会計が覆い隠してきた東芝の業績悪化が、今になってやっと噴出しただけといえる。

 実際、室町社長も「他の電機メーカーと比べ、構造改革が遅れてしまった。もう少し早く着手していれば、これほど大きな痛みにならなかった」と認めている。

 特に、よく東芝と引き合いに出される日立製作所は、リーマンショック後の09年3月期に約7800億円の最終赤字を計上したが、その後一気に構造改革を進め、営業利益率は6%を超えている。東芝は、その間の改革を怠ってきた分、さらに痛みが大きいわけだ。

 しかも、その痛みは、東芝の存続を揺るがす極めて深刻なものだ。

 顕著なのが、バランスシートの急激な悪化である。16年3月期の自己資本は、前期の1兆0839億円から60.3%減少し、4300億円となる見込み。「自己資本比率は10%を切る」と平田政善CFOも認める通り、8%以下となる可能性が高い。

「電機業界では30%を切るというのは一般的ではないので、財務は非常に脆弱だ」(平田CFO)

 上図のように、東芝は、不正会計の発覚前から自己資本比率が15%前後と、30%を維持する競合他社の日立や三菱電機と比べ、財務体質が脆弱だった。これが1桁となれば、経営危機に陥っているシャープ並みの危険水域だ。