一流ビジネスパーソンや企業のトップが研修に通うほど、リーダーシップや説得力をもたらすのに「声」は重要視されています。性格や習慣をすぐに変えることはできませんが、声はすぐに変えられます。そして、声の改善で仕事の成果が上がることが科学的に実証されているのです! 
今回、250社超の研修実績、3万人が受けた声のビジネス研修を読んで学べるボイスレッスンとして1冊にまとめました。新刊『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』より、「1分間声トレ」を動画付きで紹介します

人の耳に聞き取りやすい声は腹式呼吸で叶う

 まずは、いい声を出すためには欠かせない、基本中の基本である「腹式呼吸」からマスターしましょう。

 呼吸には、主に胸の周りの筋肉を使う「胸式呼吸」と、主にお腹の周りの筋肉を使う「腹式呼吸」があります。

 私たちはこれらを併用して呼吸していますが、どちらの割合が多くなっているかは人によって違います。

「人によく聞き返される」「声が通らない」と悩んでいる人のほとんどは、胸式寄りの呼吸で発声してしまっています。

 反対に、声が通りやすく、ハキハキした印象の人は、腹式寄りの呼吸で発声していることが多いのです。

 ではなぜ、胸式呼吸では声が通りにくいのでしょうか。

 人間が発声するとき、肺から空気を出し、その空気が声帯にぶつかって声の「もと」をつくっています。

 胸式呼吸では、胸部周辺の狭い範囲で空気の出し入れをしているので、肺に多くの空気を入れられません。

 そうすると吐く息の量が少なくなってしまうので、息に勢いがなく、声帯の震えが小さくなってしまい、聞き取りにくい声になってしまうのです。

 反対に腹式呼吸では、横隔膜が下がり、胸より深く腹まで多くの空気を取り込めます。

 吐く息の量が多いために、息を出したときに声帯がよりしっかり振動して、人の耳に聞き取りやすい声が出せるのです。

 100名近くの経営者が集まる異業種交流会に参加したことがあります。全員が順番に、1人30秒ほどで自己紹介したのですが、それだけで印象に残った人もいれば、失礼ながらまったく印象に残らなかった人もいます。

 その違いはやはり声でした。

 言葉が聞き取りやすく、適度なボリュームがあり、よく響く魅力的な声の持ち主の自己紹介には、たった30秒間でも、知らず知らずのうちに引き込まれてしまいました。

 また、そのような人が話している様子を見ていると、仕事がうまくいっている印象を受けました。

 反対に、か細い声で、モゴモゴ・ボソボソと話している人の話はまったく印象に残りませんでした。

 もし商品を買うならどちらから買いたいか、一緒にビジネスをするならばどちらの人がよいかと問われれば、考えるまでもなく前者を選びます。

 このようなことはみなさんも日常的に体験しているのではないでしょうか。

手のひらに息を吐くだけ。吸うことは意識しない

 腹式呼吸のトレーニングの方法にはいろいろありますが、ここでは、最も簡単な方法をご紹介しましょう。

(1)手のひらを口元に持ってくる。
(2)寒さでかじかんだ手を温めるイメージで、「はぁ―――」と5秒間、息を吐く。

 たったこれだけ。2回やれば十分です。

 この方法で息を吐くと、必ず腹式呼吸ができているはずです。

 片手をそのままに、もう片方の手をお腹の上に置いてやってみると、息を吐いたときにお腹が少しだけへこんでいるのがわかるはずです。

 ポイントは息を吸うことではなく、吐くことを意識すること。

 しっかりと息を吐けば、その反動で自然に息が入ってくるので、吸うことは意識しなくてもいいのです。

 場所を問わずいつでもできる方法なので、思い出したときに最低2回練習してみてください。

 次第に腹式呼吸が身についてくるはずです。

 ついでにもう一つ、簡単なトレーニングを紹介します。

 全身の力を抜いて「は―――ぁ……」と深くため息をつく方法。

 これでも自然と腹式呼吸ができています。

 ただ、「ため息は幸せが逃げる」ともいいますので、人前ではあまりやらないほうがいいですね。