高ストレス社会といわれる中、多くの企業が対象となるストレスチェック制度がスタートした。経営者に求められるのは、この制度を職場改善や生産性向上に結び付ける視点だ。一方の個人にとっては、生活を見直すきっかけにできるはずだ。そのためのアプローチについて、メンタルヘルス分野で長い経験を持つ山﨑友丈氏に聞いた。

 うつ病の患者数が急増している。厚生労働省によると、うつ病をはじめとする気分障害患者数は2008年に100万人を突破した。10年前に比べると、2倍以上の増加。社会全体にとっての大きな課題である。その背景について、日本産業精神保健学会認定・産業精神保健専門職の山﨑友丈氏は次のように説明する。

「現代社会において、メンタルリスクをもたらす要因は多様です(右図参照)。ただ、職場環境の変化が従業員のストレスを高めていることは確かでしょう。かつては、ある社員が職場にうまく適応できない場合、他の職場に異動させるなど柔軟な対応を取っていた企業が多かったと思います。しかし、最近はそんな柔軟性が減退しているのではないか。個人の業務負荷の増大も大きなストレス要因です」

多くの企業が義務を負う
ストレスチェックの実施

 うつ病などにかかった個人、医療費を抑制したい政府、社員の休職などに対応しなければならない企業。それぞれにとって、メンタルヘルスは切実な課題である。こうした社会的なニーズに対応する形で、2015年12月にストレスチェック制度がスタートした。

 この制度によって、従業員50人以上の事業所に対して年1回のストレスチェック実施が義務付けられる。その実務はかなり複雑だ(下図参照)。

 社内ルールを含めた実施方法の策定など、導入前の準備は必須だ。次の実施段階では、ストレスチェックのための質問票などを配布し、各従業員に記入してもらう。その結果は、本人に通知される。また、ストレス状況の評価や医師面接の要否判定などが行われ、「要」と判定された高ストレスの従業員から申し出があれば、医師による面接指導が実施される。さらに、医師からの意見聴取などを経て、就業上の措置が講じられる。