日本経済の発展には地域経済の活性化が欠かせない。2014年11月に可決・成立した「まち・ひと・しごと創生法」で、政府は人口減少・超高齢社会への取り組みとして「地方創生」を掲げた。衰退の危機にある地方を復活させるには、何が必要なのか。地方創生の現場を数多く取材している、地方自治ジャーナリストの相川俊英氏に聞いた。

 総務省の調査によると、地方から大都市圏(特に東京)への人口移動が収束しないケースでは、2040年の時点で、約1800自治体のうち523自治体の「消滅可能性」が危惧されるという。収束するケースでも243自治体に「消滅可能性」がある。

 故に地方創生の目的は明らかだ。「まち・ひと・しごと創生本部」が基本目標としているように、地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服することである。具体的には、国民が安心して働き、希望通り結婚し子育てができ、将来に夢や希望を持つことができるような、魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れをつくることだ。

タリキノミクスでは
活性化が持続しない

地方自治ジャーナリスト
相川俊英氏

あいかわ・としひで 1956年群馬県生まれ。早稲田大学法学部卒業。放送記者、フリージャーナリストを経て、99年からテレビ朝日・朝日放送の報道番組「サンデープロジェクト」番組ブレーンを務め、自治体関連の企画・取材・レポートを担当した。主な著書に『奇跡の村 地方は「人」で再生する』(集英社新書)他多数。

 そのために何が必要なのか。地方自治ジャーナリストの相川俊英氏は「住民一人一人が地方創生の当事者だという意識を持つこと」だと言う。「社会的な課題に直面して、その解決策を迫られた場合、誰かに解決策を考えてもらう方が楽だし、効率も良いと考えがちです。私はそれを誰か(他力)に任せる“タリキノミクス”と呼んでいます。しかし誰かに任せるとは、自らは考えないことと同義です。それが失敗を招いてしまうのです」。

 地方創生に必要なものは、三つあるといわれている。熱意のある“バカ者”、発想が柔軟な“若者”、しがらみがなく外部の風を吹き込める“よそ者”、である。

 日本全国の成功例、失敗例を見てきた相川氏は、「それに加えて私は“知恵者”を加えます。ひらめきや発想を持つ知恵者と、知識がありまとめる力のある知恵者です。つまり地方創生で重要なのは人材で、最初から完璧な計画などあり得ないので、皆(自力)で話し合い、知恵を出し合って、答えを出していくのが成功の秘訣です。外部の力や知恵、カネに頼り切るタリキノミクスでは、活性化は持続いたしません」