MBAで教えているビジネスの法則、傾向、メカニズムは知っているだけで仕事に「差」がつきます。本連載では経営戦略、統計・経済、マーケティング、コミュニケーション、人の認識(バイアス)などのビジネスセオリーを50個厳選した『グロービスMBAキーワード 図解 ビジネスの基礎知識50』から、そのエッセンスを紹介します。第2回は「マーケティング」の法則がテーマです。

マーケティングはちょっとした工夫がものを言う分野

マーケティングが企業にとって非常に重要な機能、活動であることは論を待ちません。ところで、マーケティングというと4P(Product 製品、Price 価格、Place 流通、Promotion プロモーション)、あるいはプロダクト・ライフサイクルAIDA(Attention 関心、Interest 興味、Desire 欲求、Action 行動)などに代表される王道的なフレームワークを連想される方も多いでしょう。

もちろん、これらの概念は非常に重要ですし、いまや「知らない」では済まされない知識とも言えます。そして実際に、マーケティングは、こうしたフレームワークを適切に活用すると、てき面にその効果が現れる分野でもあります。

一方で、マーケティングはちょっとした工夫が売上げを左右する分野でもあります。例えば、ECコマースの購入サイトでは、最終的に「購入」に至るまでにクリックするボタンは暖色系の色を用いると効果的なことが経験的に知られています。実際、Amazonのサイトを見ていただくと、「カートに入れる」「レジに進む」「注文を確定する」などのクリックボタンはすべてオレンジが用いられていることが分かります。

こうしたことはなかなか体系だって教えてくれる書籍なども少ないのですが、やはり知っているのと知らないのでは、最終的に大きな差が生まれてきます。

今回は、『グロービスMBAキーワード ビジネスの基礎知識50』の中から、そうしたマーケティングに関連する法則やメカニズムを2つほど紹介します。バンドワゴン効果ツァイガルネック効果です。

人は皆が欲しいものを欲しがる
「バンドワゴン効果」

バンドワゴン効果は、周りの人間の行動に自分もつられて行動したり安心感を得たりする人間の性向のことです。マーケティングの現場では、ヒット商品が生まれた場合に、自分もそれを保有したくなるという現象として現れます。

これは、マーケティングのプロモーションのヒントにするだけではなく、組織変革において早期に多数の人間の支持を得るためのヒントとすることもできます。

バンドワゴン効果は、「多くの人が買うのだから良いものなのだろう」という心理が働くことや、すでに購買した人間からの口コミに左右されることなどによって発生するとされます。「影響力の武器」の1つでもある「社会的証明」(人間は、特に自分があまり自信を持てないことに関しては、多くの人の行動に従うという心理)の効果も強く働いていると言えます。

実務的には、それが流行っているという状況を伝えるプロモーションを行うと効果的です。例えば出版社や書店がある書籍を販売する時に、「早くも50万部突破」などといったPOPを書店内にかかげたり、同じ書籍を一面に数十冊も平面的に並べたりするのは、そうした効果を狙ったものです。

さらに付け加えると、1社のみで行うよりも、業界数社が協力して行うと、よりその効果が増します。そうした業界の例に証券業界があります。たとえば、これから推していきたい「テーマ」があった時、1社のみでそれを世の中に流行らそうとしてもなかなか効果はでません。

そこで、業界の主要プレーヤーが連携するとともに、マスコミなども巻き込み、「今年のキーワードはコレ」といったキャンペーンを展開するのです。かつてゴールドマンサックス証券が最初に提唱したBRICsなどもその例と言えるでしょう。近年であれば、「IoT銘柄」「シェア銘柄」などもそれに該当するかもしれません。

こうした活動の結果、そのテーマについて話をしたり実際に株を買ったりする人が増えると、他の人間もその情報に触れる機会が増え、自分も買ってみたいと思うようになります。こうしてますますそのテーマが浸透していくのです。