船島伸広 弁護士
1967年生まれ。東京大学法学部卒業。社会人経験を経てロースクール1期生から弁護士に。大手弁護士事務所勤務後、弁護士事務所設立。不動産、遺産相続、企業法務が専門。宅建、マンション管理士、管理業務主任者などの不動産関連資格も有する庶民派である

 遺産として相続する資産の半分以上は、土地や家屋などの不動産が占めるといわれる。根強い土地神話に加え、課税評価額を抑えられるなどのメリットが大きい反面、不動産は分割しにくいという弱点を持つ遺産でもある。

 現金や証券なら簡単に分けられるが、不動産には「誰が住んでいるか」や「生前、介護などで献身的に尽くしたのは誰か」などの心情が複雑に絡み、すぐに現金化して遺産分割することが容易には進まないケースも多い。そうした不動産がらみの複雑な相続問題を、争わずに一つひとつていねいにオーダーメイドで解決しているのが、東京セントラル法律事務所の船島伸広代表弁護士だ。依頼者の話にひたすら耳を傾け、法律、税務、不動産の経験による総合力で最適解を探し出す。

不動産の相続では
複数の選択肢を提示

──不動産の相続税は専門外なので、税理士にでも相談してみてください。

 遺産分割協議の相談に訪れた弁護士事務所で、相続税についてこんな返事が返ってくることもある。遺産分割協議や遺言などの法律相談は弁護士、相続税対策の相談は税理士というのが一般的な認識だが、こと不動産の相続に関しては、法律と税務をバラバラにすると、思わぬ税負担になることもあるから要注意だ。

 船島弁護士のところに持ち込まれた相談も、最初は不動産売却を伴う兄弟5人の遺産分割協議だった。しかし話を聞くうちに、末の弟だけ持ち家がなく実家に住み続けていることがわかった。

 依頼通り遺産分割すれば、実家を兄弟の共有財産にして売却し、5000万円で売れれば1人1000万円の相続になる。これを各自が申告すると、税率10%として1人100万円、計500万円の相続税を納めることになる。

 ところが、住宅には相続課税で生活基盤を失わないようにするための「小規模宅地の特例」という軽減措置があり、財産評価額を80%も下げることができる。もし持ち家のない弟が実家を1人で相続して住み続ければ、評価額を1000万円程度にまで下げられ相続税はゼロで済む。実家を相続した弟は他の兄弟に法定相続分に相当する現金を払う「代償分割」が求められるが、相続全体からすれば大きな節税効果が期待できる。

「不動産に限らず相続にはいくつかの選択肢があることを依頼者に提示することが重要です。相続には相続人だけでなく税務署という第三者が絡んできますので、兄弟間の遺産分割だけでなく税制との関係も考える必要があります。相続専門の税理士と連携して、そうしたワンストップサービスを提供するのが、弁護士の本来の職能なのです」

 一方、税理士は最大の節税効果を目標に処理するので、相続人に不平等感が残ることも多い。法律と税制のボーダー部分が原因で、感情のすれ違いをきっかけに相続人の間に紛争が巻き起こることも少なくないそうだ。

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