2020年に東京オリンピック開催が決定し、観光都市としての魅力を高め、訪れる人々を「おもてなし」しよう、という機運が高まりつつある東京。その最前線に立っているのがタクシーです。首都圏最大のタクシー会社、日本交通では、同料金でハイヤー並みのサービスを受けられる「黒タク」を導入し、他社と差別化を図っています。タクシー運転手のやる気を引き出す仕組みを取材しました。[写真]= 杉山正直

人気の「黒タク」とは?

日本交通・黒タクシーに学ぶ「おもてなしの秘密」<br />検証現場⇒日本交通講習での実習。実際に黒タクを使い、ドライバーとお客様役に分かれてロールプレイをする

 最近、街でよく見かける「黒いタクシー」、通称「黒タク」。黒く光る車体が、ハイヤーのような高級感を醸し出しています。その割に料金は通常のタクシーと同じ、というお得感で密かな人気となっています。

 首都圏最大のタクシー会社、日本交通では、この「黒タク」にドアサービスなどハイヤー並みのサービスを導入し、他社と差別化を図ることで、業績を伸ばしているとのこと。

 日本交通の黒タクは何が違うのでしょうか。まず気づくのは、無線配車の際の運転手さんによるドアサービスです。乗り降りの際に、運転手さんがわざわざ回り込んでドアの開閉を行ってくれます。車内は広々としてすっきりクリーンな印象。「車内はお客さまの空間」という考えから、余計なものは一切なく、運転席と後部座席を仕切るパネルも、ハイヤーに近い仕様にするため取り払ったとのこと。パネルに貼られた広告などがないことも、すっきり感につながっています。

 応対も「日本交通の〇〇でございます」と丁寧。大荷物がある時は、トランクへ荷物を運んでくれます。これだけスマートなサービスを受けられて通常の黄色いタクシーと同料金ならば、「次も黒タクで」と人気が出るのも納得です。

 しかし、通常の黄色いタクシーと同料金で、これだけのサービスを実現できるのでしょうか。その秘密を探るべく、日本交通の「黒タク講習」なる社内研修に潜入。そこには、タクシードライバーたちのやる気を引き出す仕組みが隠されていました。