『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』『バクマン。』などを手がけた映画プロデューサーで、初めて書いた小説『世界から猫が消えたなら』が120万部を突破し映画化。2016年も映画『怒り』『何者』など、次々と繰り出される企画が話題を集める川村元気。その背景にあるのは「“苦手を学ぶ”ことで、人間はぎりぎり成長できる」という一貫した姿勢だという。
そんな川村元気が、話題の新刊『理系に学ぶ。』では、「文系はこれから何をしたらいいのか?」をテーマに最先端の理系人15人と、サイエンスとテクノロジーがもたらす世界の変化と未来を語っている。
本連載ではその中から5人との対談をピックアップするが、第11回は、「世界の栄養不足を救う!」ために研究を始めたミドリムシの多様な可能性を追求し続けるユーグレナ代表取締役社長の出雲 充さんとの対談後半。

ミドリムシにライバルはいない?

川村 ミドリムシにライバルはいないんですか?
出雲 いないですね。

川村 言い切るなぁ(笑)。ただ、海外でミドリムシを大量培養させようってところは、あるにはあるんじゃないですか?
出雲 見張りには行ってますけど、基本的には「今になってゼロからやろうなんて無駄なことはしないで、こっちは君のとこに2周差をつけてるんだから、僕に聞けばいいじゃん」っていう感じで接しています。

川村 撃ち合わずにクリンチをしに行ってるわけですね。「一緒にやろうぜ」って。
出雲 そうです。

川村 ミドリムシ以外のバイオ燃料はライバルにはならないんですか?
出雲 トウモロコシやサトウキビから膨大なガソリンが作られてますけど、今の地球はそれでなくても農地も食料も足りていないのに、せっかく作ったトウモロコシが人間の口でなく機械に回されているなんて、人道に反しています。だから、ミドリムシなんです。

川村 ミドリムシの培養には農地が必要ないですもんね。
出雲 日当たりさえあれば、砂漠でも、海上でも、放射性物質が飛んでいた耕作放棄地であっても、ミドリムシを培養するプールを設置するだけでいい。ミドリムシはトウモロコシなんかとは世代が違うバイオ燃料と言えます。それに、例えば原子力もソーラーも風力も結局生み出すのは電気なわけで、人間は電気ではお腹いっぱいにならないから、これもミドリムシとは関係がない燃料になります。