もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』(通称:『もしイノ』)のオーディオブック化を記念して、著者の岩崎夏海さんと朗読を担当した声優の仲谷明香さんが対談しました。岩崎さんと仲谷さんは、仲谷さんがAKB48のメンバーだった時からの付き合いです。声優としてどう「居場所」をつくっていくのか。既存の枠組みを壊して、どうイノベーションを起こすのか。『もしドラ』と『もしイノ』を読んだことで、仲谷さんがやってみたいと思うようになった職業とは?(構成:崎谷実穂、写真:京嶋良太)

居場所をつくるために<br />戦略的に考える

居場所をつくるために、戦略的に考える

岩崎 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(通称:『もしドラ』)のオーディオブックの朗読をしてもらったのが、2010年。それから6年経って『もしイノ』の朗読をしてもらったわけだけど、気持ちに変化はありましたか?

居場所をつくるために<br />戦略的に考える仲谷明香(なかや・さやか)
1991年10月15日生まれ。声優として、アニメ・ゲーム・舞台などで活躍を続ける。2010年には、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で朗読を担当し、その後、同作のアニメ版で北条文乃を演じる。代表作は「不思議なソメラちゃん」(野乃本ソメラ)、「迷家-マヨイガ-」(なぁな)、「ハピネスチャージプリキュア!」(オリナ/キュアウェーブ)ほか。

仲谷 前は朗読も初めてでしたし、無我夢中で「ちゃんと読まなきゃ」という思いが強かったです。気合が入りすぎて、空回りしていたところもあったと思います(笑)。でも今回は少し余裕ができて、どう読んだら伝わるかということをいろいろ考えられました。自分のできる範囲で精一杯やろうと、腰を据えて取り組めたと思います。あと、『もしドラ』のときよりも、たくさんのキャラクターが出てくるので、それぞれのキャラクターを立たせることを意識しました。

岩崎 それこそAKBに入った10年前から考えると、ずいぶんたくましくなりましたね。

仲谷 戦略的になったと思います(笑)。

岩崎 これからは声優として、どんなふうに活躍したいですか?

仲谷 やっぱり今は、レギュラーの役がたくさんほしいですね。そのためにはオーディションに受からないといけないので、自分が音響監督さんだったらどういう声が欲しいかな、と選ぶ側の気持ちになって考えるようにしています。あとは声の演技の部分だけでなく、服装をそのキャラクターに寄せてみたり、一緒に気分よく仕事をするためには何が必要なのかを考えて行動しています。

岩崎 アイドルも競争が激しい世界だけど、声優も売れっ子になるのは難しいですよね。やっぱり、1つ大きな当たり役がほしいと思いませんか?

仲谷 うーん、欲しいといえば欲しいのですが、それはもう少し先かな、と思ってます。今何かの役でバーンと当たっても、実力が伴っていないので。若さで勝負したくないです(笑)。長く活躍する声優になるためには、急いでもしょうがないと思っています。

居場所をつくるために<br />戦略的に考える岩崎夏海(いわさき・なつみ) 1968年生まれ。東京都日野市出身。東京藝術大学建築科卒。大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として多くのテレビ番組の制作に参加。その後、アイドルグループAKB48のプロデュースなどにも携わる。著書に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』など多数。

岩崎 地に足がついてますね。芸能界で10年のキャリアを積んできただけある。AKB48のメンバーだったことは、声優として活動する上でマイナスになることもあったんじゃないですか?

仲谷 正直、足かせになることも、なくはないですね。でも、無駄じゃなかったと思っています。

岩崎 そうですよね。僕も放送作家になった時、「この仕事は学歴なんて必要ない」っていじられたけど、だんだん「東京芸大出身」ということを逆手にとってキャラクターを確立していったんです。仲谷も声優として実績が積み重なっていったら、AKBだったことがプラスになる部分も出てくると思います。