孤独や社会的な孤立は心身を蝕むが、欧米と日本とでは異なる傾向があるようだ。

 英国の研究チームは日本人を含む、18歳以上の男女、約18万人を対象とした複数の試験から、孤独や社会的孤立と心血管疾患、脳卒中との関連を解析。

 解析の結果、孤独で社会的にも孤立している人は、心筋梗塞や狭心症の発症リスクが29%高く、脳卒中リスクも32%高いことがあらためて裏付けられた。孤独を抱えていると免疫力が低下し、早期死亡リスクが上昇するという。

 解析対象の一つである日本の「JPHC研究」は、40~69歳の男女、約4万4000人が対象。

 住民検診時に「心身を支え安心させてくれる家族や友人」の有無、「週に1回以上話す友人」の有無と人数、「行動や考えに賛成して支持してくれる人」の有無、「秘密を打ち明けられる人」の有無を尋ね、各回答から対象者を社会的支えが「とても多い」「多い」「ふつう」「少ない」の4群に分けた。10年の追跡期間で脳卒中と心筋梗塞の発症、死亡を比較している。

 その結果、社会的支えが「少ない」人は、「とても多い」人と比べて脳卒中死が男性1.6倍、女性1.3倍と高い数値となった。ただ、発症そのものへの影響は認められず、「発症後の支えの乏しさ」が死亡につながったと考えられる。また心筋梗塞との関連も見いだされなかった。

 興味深いのは、欧米では必ず問題となる「孤独=メタボ」の構造が逆転していたこと。特に男性は「社会的支えが多い」人でメタボ率と肥満率が上昇。日本特有の「宴会・飲み会文化」のおかげ(?)で飲酒と脂肪摂取量が上がるためのようだ。

 ただし、JPHC研究は7年前の報告。今や宴会文化も記憶遺産に推したいほど絶滅の危機にある。「社会的支え」のありようも昔とは変わってきた。今後は日本でも、孤独がメタボや心疾患リスクへとシフトするかもしれない。

 孤独の健康リスクは喫煙に匹敵する。できれば中高年のうちに、会社以外で絆を育てておくといい。ただし、宴会を開く際は飲酒量と脂肪摂取量をほどほどに。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)