不満が多い人──。普通、こういう人はネガティブな評価を受けます。しかし、Pepper元開発リーダーの林要さんは、「不満を感じることを否定してはならない」と断言。むしろ、不満を感じるセンサーが敏感な人のほうが、イノベーティブな仕事で結果を出せると言います。それは、なぜか?林さんの著作『ゼロイチ』から抜粋してご紹介します。

「不満が多い人」のほうが仕事ができる理由

 

「不満」は重要なサインである

 不満が多い人──。
 普通、こういう人はネガティブな評価を受けます。
 たしかに、何をやっても不満ばかりを言う人と一緒にいるのはイヤなものですし、仕事に対して不満ばかり口にする人で、目覚ましい成果を上げた人も見たことがありません。不満を常に口にしているのは、自分にネガティブなおまじないをかけ続けているようなものだからでしょう。

 しかし、だからと言って、不満を感じることそのものを否定すべきではありません。そもそも、世の中には、「合理的に考えて、不満をもって当たり前だよね?」ということはしばしばあります。そんな「合理的な不満」を抑え込むのは精神衛生上よくありません。むしろ、僕は、そんな不満を多く感じられる人ほどゼロイチには向いていると思うのです。

 なぜなら、「不満を感じる」ということは、世の中に対して「違和感」を感じるセンサーが鋭敏な証拠だからです。感性が鋭い、とも言えます。「何かが足りない」とか、「何か余分なものがある」とか、とにかく不合理的で不便だったり、その場に相応しくないことがあるからこそ、僕たちは不満や違和感を感じるわけです。であれば、その「何か」を最適な形にすればいい。そして、不満や違和感を解消することができたとき、それをゼロイチと言うのです。
 つまり、不満や違和感は、ゼロイチの重要なサインなのです。

 だから、僕は、日常生活のなかで感じる不満や違和感を大切にしています。たとえば、財布。僕は、どういうわけか財布が分厚くなるのがイヤで仕方がない。お金がたくさん入っていて厚いならまだ自分をなだめることもできますが、そういうわけではないのにカードやら何やらであっという間に財布が分厚くなってしまいます。重たくなるし、ズボンのポケット入れると不格好になる。それに、キーケースと財布の両方を持つのも面倒くさい。

 最悪なのは、財布をなくしたとき。銀行、カード会社、運転免許証……。四方八方に連絡をして、ウンザリするほど面倒くさい手続きをしなければならない。だから、財布を手にするたびに、心のなかでブツブツ不満を言っていたわけです。