部下に変化がなくても、あきらめてはいけない

 本連載は今回で最終回です。最後の最後に皆さんに、とても残念なお知らせがあります。

 若い社員が、自然に気づいて、自発的に変わっていくなんてことは滅多にありません。ですから、リーダーである皆さんのサポートが必要になります。

 しかし、本書で紹介した知識やスキルを皆さんが今から毎日、愚直に実行したとしても、劇的な変化、そして外的な変化は望めません。

 ここまでが残念なお知らせです。ここからは朗報です。

 私の実体験を紹介します。

 第10回でも紹介しましたが、私が新入社員当時、その頃は目にかけてもらっているとは気づかず、いじめられていると勘違いしていましたので、私は日々、悶々とした会社員生活を送っていました。特に一番接する機会が多かった指導員役の主任とは馬が合わず、やることなすことすべてを否定され、最後には無視までされ、私は次第に居場所を失っていきました。もうそうなると、会社に行くのが苦痛で苦痛で仕方なくなってしまいました。

 しかし、当時の部長が、とてもできた方で、そんな悩んで腐っている私に、ときどき声かけをしてくれたのです。

「おい、内田。元気にしてるか」

 その程度の短くてシンプルな声かけです。

 また、この部長は私が独身寮に住んでいることも、ちゃんと覚えてくれていて、「おい、内田。新しい環境には慣れたか」とか「ちゃんと寮の朝飯を食ってきてるか」とか「寮の先輩とは仲良くやってるか」などの声かけもしてくれました。

 しかし、相手は一部上場企業の部長です。私にとっては雲の上の存在でした。私は緊張しすぎていて、なんと返事をしたらよいかもわからず、ただ黙って困った顔をしたまま、立ちすくんでいた記憶があります。

 そのときの部長の寂しそうな顔つきは今でも忘れられません。